外断熱の注文住宅を建てる建築会社2代目の頭の中

住み心地とか、住む人の健康とか、家族の安心安全とか、大きな資産とか、喜び感謝クレームとか、様々に満ちている業界で色々と考えています。地域のため、日本のため、世界のため、御施主様のため、社員さん職方さん業者さん大工さんのため、自分だけにしかできない事がどんどん増えていく毎日は刺激的です。

アパート・賃貸併用住宅は外断熱が良いか?[前編]

さて前回はコンパクト1LDKという間取りについて語りました。
今回は外断熱の、もしくは高気密高断熱のアパートは入居者に選ばれる差別化になるのか?メリットとデメリットについて黒柳建設の実感に基づく見解を公表します。例によって長くなってしまったので、この話題は前後編に分けます。

 

そもそもなぜ外断熱でやろうと思うのか

外断熱(高気密高断熱)のアパート建設ってなかなかやっている建築会社が少ないので、黒柳建設のホームページに細々と載せているくらいの施工事例なんかでもお問い合わせは頂きます。

そのような方達になんとなく共通する特徴として、海外特にヨーロッパ方面での生活経験があり、向こうの高断熱住宅(ちなみに向こうでは法律義務レベルだったりします)の住み心地をご存知だという方が多いように感じます。

海外では住宅に対する断熱の基準が厳しい国ほど、意識せず高断熱住宅の恩恵を受けられますので、何気なくお住いのフラットでも住み心地が格段に良く、光熱費も結構安いのです。
それに引き換え日本のアパートは断熱性も悪いわ、光熱費は掛かるわ、住み心地なんて考慮されてないわ、とんでもないじゃないか。ん、待てよ、なら高断熱の住み心地抜群のアパートを日本で建てたら大入り間違いなしなんじゃね?
そうだよ、それだったら多少家賃が高くても光熱費の削減分と差し引きしてチャラになるから入居者もハッピーじゃん。よし、日本に帰ったら早速探してみよう、いや今すぐネットで検索だ!

まあ表現は違いますが、そんな感じで気付いた方の中で賃貸経営や資産活用にご興味のある方が、高断熱・外断熱・賃貸併用住宅で黒柳建設にたどり着くことがあります。

えー、らっっしゃっせー、おきゃっさまー。
そうそう、そこに気づくとはお客様お目が高い、まさしく黒柳建設の推奨するアパート・賃貸併用住宅がピッタリです。
さあ建てましょう、どんどん建てましょう、すぐ建てましょう・・・・となれば話は簡単なのですが、残念ながらそうはいきません。

そこにはたくさんの分厚い壁が待ち構えてます。ですが、それでも外断熱で建てた方が良い、私達はそう感じています。
では、その分厚い壁とはどのような壁でしょう。主に3つの壁ですが、一つづつ壁の中身と、「でも外断熱」についてご紹介していきます。

 

[第一の壁] 断熱・住み心地に関する無関心の壁

まず第一の壁がこちらです。

無関心、と言うよりも、ご存知でないと言う方が正しいのかもしれません。
住宅購入を検討されている方々は色々と勉強をされていますが、アパートを借りる際に建物の事を勉強する人は普通いません。アパートなんてどれも同じ、性能に大差ない、古いより新しい方と考えられているからです。
せいぜい、地震が怖いから木造より鉄筋コンクリートのマンションがいいなぁ、女性の一人暮らしは不用心だから防犯カメラやオートロック付きがいいなぁ、宅配ボックスはマストでしょう、くらいの気構えです。
(スミマセン、入居者さんを貶しているわけではなく、主にヒアリングを行った不動産業者さんから聞いた話です)

断熱性?住み心地?省エネ基準?断熱性能等級?なにそれおいしいの?
そんなことより駅近でしょ、間取りでしょ、築浅でしょ、設備のグレードでしょ、と興味の対象は全く別な場所にあります。
(これは実際私が部屋探しをした際にあちこちで聞いた感想です)

そのため訴求が非常に難しいのが現状です。これではせっかくの強みもうまく生かせません。
設備が普通だったり、間取りが一般的だったりするとなかなか入居者さんが決まりません。
外断熱で、高気密高断熱で、住みやすく、快適なのになぜ決まらないのだろう。
答えは簡単です、入居者さんが知らないからです。


ですが、いちど入居された方はなかなか出て行かないということも事実です。
結婚を機に退去されたある女性の入居者は「10年間カビも結露もなく本当に快適でした」と、わざわざ大家さんに挨拶に来てくれたことほどです。
この方は実家でも今までのアパートでもコートやブーツにカビがつくのが当たり前だったのに、この家では全くなかったと本当に感動されていました。細かいところまで探せばちょっとした結露ぐらいは発生しているはずなのですが、今までに住んだところとは明らかに違いを感じていたのでしょう。
新築当時からずっと入っていて下さった方だけに、その言葉には説得力が有ります。

ですから、こういった具体的な効果を案内のチラシに散りばめるなどしてわかりやすくして、そういったニーズを持つ入居者さんを狙い撃つことを意識しなければいけません。
これは今入っている入居者さんから折を見て聞き出しています。

 

高気密高断熱は知られてない、だから分かりやすい表現で説明

「カビ、結露が発生しにくい」、「ブーツやバッグ、革製品にやさしい部屋」、「断熱性が良いので光熱費が大幅減」、「気密住宅+換気フィルターで花粉や粉塵をシャットアウト」、「暑さ寒さ湿気を感じにくい」、「断熱・遮音のプライバシー居室」、「2020年義務化レベル」、「最新省エネ基準の2割増だから、夏涼しく冬暖かく梅雨爽やか」

などなど、一般入居者さんの視点でメリットとなる謳い文句を、不動産の広告表示に引っかからないように気をつけて考えています。


ですが、残念ながらこれだけでは差別化にはなっても、家賃が高くても借りてくれる動機にはちょっと弱いです。
あくまで同じ家賃、同じ間取りならこちらを選ぶ材料にはなるかな、といった程度です。
「高気密高断熱の高性能アパートだから、家賃を高く設定できる」
という考えは、ちょっと難しいかなと思います。

むしろ、住みやすいちょっと面白い間取りで、家賃は相場並み、これで訴求して、2ケタ年の長期入居。
実績としてはこちらの方が多く見受けられます。
だから、オーナー様は最初は期待していたほど性能が家賃額に反映されずちょっとガッカリされますが、一度入った入居者さんが全然出て行かないので、「アパートって意外と入退去がないものだなぁ」と感想を抱かれます。
そうではありません、住み心地が良いので入居者さんに退去する理由が生まれないからです。



後編の第二、第三の壁はまた次回でご説明します。
これもなかなか難関な壁ですが、それはそれでそれなりに考えを巡らせてしっかりと対策していく必要があります。