外断熱の注文住宅を建てる建築会社2代目の頭の中

住み心地とか、住む人の健康とか、家族の安心安全とか、大きな資産とか、喜び感謝クレームとか、様々に満ちている業界で色々と考えています。地域のため、日本のため、世界のため、御施主様のため、社員さん職方さん業者さん大工さんのため、自分だけにしかできない事がどんどん増えていく毎日は刺激的です。

国策をフォローする工務店の立場で感じること②

毎年消化されないで国庫に返還される補助金はかなりの額に上るそうです。

 

様々な国策事業に対応するようになったのはいいのですが眼前を横切る省庁間の溝にいつも悩みます。こんにちは、東京都小金井市で外断熱・涼温な家を建てる工務店、黒柳建設の国策担当/WEB担当/システム管理者/営業/現場監督/アフターメンテナンス/OB顧客様係の黒柳一聡です。

 
毎年毎年、新しい事業、新しい制度、新しい書類に辟易することもあります。でも視点を変えて考えてみると、あの書類の山を作成して処理している方がもっと大変ですよね。
 
ちょっと興味深い話も聞けたので、国策事業の執行側について思いを巡らせてみました。
 
 
 
霞が関の舞台裏を妄想する
 
直近の経済産業省のZEH普及加速事業補助金の説明会でも感じましたが、公募と同時に公開される公募要領や即開催される説明会など、補正予算の通過を見越して準備していないと到底間に合わないものばかりです。
 
中身も極力公平かつ公正に執行されるようにできており、資料を読み解いて書類を作成する私達も相当大変なのですが、この仕組みを作成して執行する側はもっともっと大変なんだろうなぁとつくづく感じます。
(日本の官僚はつくづく素晴らしく優れた能力をお持ちですね)
 
私たちにはこうした制度を「利用しない」自由がありますが、行政の方はそうはいきません。
告知して周知させて、質問に答えて相談に乗って、書類を添削して、間違いが無いように執行しなければいけません。
 
また予算が消化しきれなければ来期は縮小されるでしょうし、予想に反して集まり過ぎてしまっても国民側から批判されます。
 
予算額に応じた適正な応募数、時期地域ともに遍く(あまねく)分布させ、特定の業種業態に偏らない公正な分配が求められるので、その苦労は大変なものと考えます。
(その割には大手ハウスメーカー寄りだと、私達工務店は難癖をつけますが)
 
  
 
公務員のお施主様の共感
 
たまたま10年点検で霞が関ではなく県政に従事していらっしゃる方がいるので、ZEH改修をご紹介しお勧めすると同時に、こうした事業の舞台裏について聞いてみました。
 
すると
 
「あー、わかるわかる」
「そうそう、こういう書き方するよねー」
「こういうのウチでもあったわー」
「結構よその事業を参考にするよねー」
(意訳)

 
と大変な共感を頂いてしまいました(笑)行政マンあるあるネタのようなものみたいです。
 
 
友人の某国家公務員も
 
「財務担当者が納得するかは、各省庁担当者の手腕。年度末執行はチャンスかつピンチ」

 
などとコメントしており、予算執行には大変な苦労があるようです。
 
こういう話を聞くと、あの難解な公募要領も無駄に面倒臭い申請書類も、こうした行政マン達が苦心して作成しているのだと思え、なんとなく頑張って取り組もうという気になります。
 
確かに無駄に面倒臭くて営業には全然役に立たないと感じることもしょっちゅうですが、国税から補助金は出ているのですから、国策に沿った方向へ適切に使われないと納税者は納得しないのは当たり前ですよね。
 
補助金という事業は国がより良い方向へ誘導したいから策定するものであり、その上で優遇措置を受けられるものですからあまり使い勝手が良くないのは仕方ないと言えます。
 
それでも、もう少しなんとかして欲しい、というのは贅沢ですが正直な気持ちです。
 
 
 
 
できないから「酸っぱいブドウ理論」
 
長期優良住宅制度が出た2009年、黒柳建設の周りでは国策に乗る工務店はほとんどいませんでした。恐らく私達も最初のお客様がいなかったら今の流れは無かったのではないかと考えています。
 
書類が面倒臭い、申請や手続きに余計な費用がかかる、税制の優遇も大したことない、補助金だって貰えるかどうかわからない、どうせあんな制度うまくいきっこない、ハウスメーカーが泊付のために作ったようなもんだ。
 
当初はそのように考えていたことは事実です。
これを私は酸っぱいブドウ理論と読んでいます。
 
イソップ童話の「狐とブドウ」の話を聞いたことはないでしょうか?
 
「きつねとぶどう」
 
お腹を減らした狐がたわわに実ったブドウを見つけ、喜んで食べようと跳び上がりますが手が届かないため食べられません。何度挑んでも届かず、狐は怒りと悔しさで負け惜しみの捨て台詞を吐いて立ち去ります。
「どうせこのブドウは酸っぱくてマズイに決まってる、誰が食べてやるもんか、ボクは最初からブドウなんて食べたくなかったんだ」
 
 
この童話が転じて、欲しいものが手に入らず努力してもその努力が徒労に終わった時、自分を諦めさせ慰めるために欲しかったものの価値を貶め、自己防衛を行う、心理学の例としてあげられています。
 
こんな話を昔聞いてから、負け惜しみ的に何かをdisることを「酸っぱいブドウ理論だな」と捉えています。しょっちゅう自分が当てはまるのが至極残念ですが。
 
 
 
自分も「酸っぱいブドウ」と口にしていた
 
上で言っていたことはまんま、まさに酸っぱいブドウの典型です。
新しい制度には対応したい、でも現状困難で面倒臭い、だからその制度に対応しないことを自分に対して言い訳していたわけです。
 
そのことがわかってしまうと逃げ場がありません、自分についたウソはバレてしまうと自分自身には二度と通用しないのです。酸っぱいブドウ理論を自分が口にしていると悟ってしまった場合取るべき手段は2つです。
 
素直にできないことを認めること。
もしくは挑戦し克服してしまうこと。
 
 
黒柳建設と私は後者を選びました、負けず嫌いでしたから。
 
 
あれこれ理屈を付けてゴネていましたが、「できない」のではなく「やりたくない」だけだと分かったので、諦めて「やる」ことにしたのです。諦めたのは「言い訳をする」ことです。言い訳が「万策尽きた-!」ので、不承不承向き合うことにしたのです。本当に往生際が悪い性格をしているとつくづく感じます。
 
 
で、どうだったかというと。 
それなりに苦労もしましたが、結局大したことはありませんでした。
こんなことなら時間の都合がついた時に、さっさと片付けておけば良かったと思ったくらいです。
多分言い訳をしている時間の方が長かったくらいです。
「いつもこうだ」と気づくのは、いつも終わってからです。
でもまあ、無事に終わってできることが一つできたので、トータルでは良しとしています。
 
あと、お客様には大変喜んで頂けたので、それも嬉しかったです。
 
 
 
すっかり今では
 
それから早7年。
今では当初から当然のように対応していました、と言わんばかりにお勧めするようになっています。
 
「これからの時代、当たり前でしょ?」
 
とか口をついてきそうですが、さすがにそこまで態度が一変するのもどうかと思い、このへんの下りはホームページの「長期優良住宅への取り組み」にも正直に記載しています。
 
「手のひら返し」がこれほどしっくりとくる態度は他に無いのでは、と自分たちでも思うほど華麗にひっくり返りました。
まさに「熱い手のひら返し」で手首は腱鞘炎ぎみです。
 
さて次は低炭素住宅だ、ゼロエネルギー住宅だ、ZEHの補助金だ、と順当に取り組みを拡大させており、非常に良い円環の理が形成されてきていると感じます。
 
 
 
 
 
前回もお話しした通りすんなりとはいきませんが、お品書きに書かれていない物を買いにくるお客様はいません。
しっかりと「できます」とお品書きに明記しておくことで、お客様に安心して選んで頂けると考えています。
 
 
 
 
だから、お願い。
どなたかせっかくの補助金枠を使って下さい。