外断熱の注文住宅を建てる建築会社2代目の頭の中

住み心地とか、住む人の健康とか、家族の安心安全とか、大きな資産とか、喜び感謝クレームとか、様々に満ちている業界で色々と考えています。地域のため、日本のため、世界のため、御施主様のため、社員さん職方さん業者さん大工さんのため、自分だけにしかできない事がどんどん増えていく毎日は刺激的です。

国策をフォローする工務店の立場で感じること④

11月から雪が降るなんて、今冬の空模様が心配です。やだなぁ、雪やだなぁ。

 

いきなりの雪模様で、今冬の天気が途端に不安になってきました。雪には上棟を2回立て続けに潰された経験があるので、ちょっとしたトラウマがあります。

こんにちは、東京都小金井市で外断熱・涼温な家を建てる工務店、黒柳建設の国策担当/WEB担当/システム管理者/営業/現場監督/アフターメンテナンス/OB顧客様係の黒柳一聡です。

 
 
現場の実務者としての実感
 
2009年に長期優良住宅の普及促進事業を経験してから、毎年のように何かしらの国策事業の対応をしてきました。そうするとなんとなく慣れのような感覚ができてきて、自分なりに抑えるべきポイントを見いだせた気がしています。
今回はそんな勘どころの話と実感を、これまでの経験から述べたいと思います。
 
※これらは私がこれまで携わってきたり、様々なセミナーに参加して感じたことですから、一般的な見解や本来の狙いとは異なっているかもしれません。現場のナマの声ということでご了承ください。
また情報の真偽も曖昧な思い込みによって構成されています。話半分程度にとどめて置いて下さい。
 
 
 
管轄はどこ?
まず、新しい事業の情報をキャッチした場合、どの省庁の管轄かをチェックはします。
前回述べたように、国土交通省経済産業省環境省の3省がほとんどで、頻度もこの順番です。慣れ親しんでいるのも、気持ちが楽になるのもこの順番です。
 
なぜかは調べていませんが、各種事業は民間の執行団体を公募し、そちらに実務を任せるというやり方を取っています。
国土交通省の場合は「実施支援室」、経済産業省は「環境共創イニアシチブ」、環境省では「低炭素社会創出促進協会」という団体が公募を経て執行団体に選ばれておりますが、十中八九行政の外郭団体だと思ってます。
 
中の人も、各省庁からの出向と、メーカーなどからの人的支援(人身御供??)でできているようで、つまりは内輪で廻している模様です。伝え聞いた話なので、本当かどうかは存じませんが。
一応、名目上は公募を掛けないといけないことになっているのかな、と理解しています。そこに「ずるい」とか「天下りが」などと野暮を言うつもりもありません。誰かが事務作業をしなければいけないことなので、そこの公正さにこだわると事業自体が立ちいかなくなってしまうと思いますので。
 
 
 
新規、それとも継続?
次にその事業が前年度からの継続事業なのか、全くの新規事業なのかを見ます。
今のところ継続している事業は国土交通省の長期優良住宅普及促進事業と経済産業省のZEH支援事業です。住宅エコポイントは3年ほど続いたのですが、林野庁の木材利用ポイントへ継承されそちらは単年度で終わってしまいました。
 
新規事業の場合、公募期間が短かったり予算が少なかったりして、ある程度ゴールが見えていたりと、全然使えもしないことが多いです。先導的モデル事業なんかがこのパターンです。
恐らく初年度は様子見の意味合いもあるせいだと思います。
今年の環境省の新規事業「平成28年度二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金(賃貸住宅における省CO2促進モデル事業)」なんかは公募の発表から2週間で公募開始、1ヶ月ちょっとで締め切りでした。
 
そんなん、前もって知ってないと使えないやん!
 
恐らく、長期優良住宅の先導モデル事業もそんな感じだったのでしょう。使われなかったら意味ないですしね。 
継続事業の場合でも前年度から微妙に変更が加えられていることがあるので、そこいらも細かく調べます。去年と一緒だろうとタカをくくっていたら、着工時期の定義が変わっていて危うく対象外になってしまうところだった年がありました。
 
 
 
書類の書式は?
最後に提出書類の書式を確認します。
締め切りや別途添付する建築確認関係の書類の有無も要領に書かれているので、その傾向もだんだんわかってきました。
 
国土交通省は既存の認定や適合証明書などを添付することでその建物の基準クリアの証明としますが、経済産業省のZEHは独自の基準があり提出書類に詳細に記載する必要があります。
環境省は独自の基準を作るつもりは無さそうで、既存の基準や認定制度をそのまま使えるようでしたが詳細は調べていません。
 
 
例えば、経済産業省のZEHは強化外皮基準UA値0.6未満(本州エリア)を満たし、エネルギー削減量を20%達成した上で太陽光発電を載せてトータルで概ねゼロエネルギーとする必要があります。
これは長期優良住宅や低炭素住宅の認定を取っても意味がありません。すると認定書や適合書を持ってこれを証明することができず、申請書類に全部記入しなければなりません。
 
 
 
 
住宅業界へ参入する省庁 
宅建築業界の私たちには、旧建設省国土交通省が一番馴染みがあります。
建設土木系から、運輸、国土、観光、気象、海洋、河川、港湾、住宅と国のインフラを一手に担う大型省庁で省庁の中でも技官(理系技術職)がトップになれる省です。
土木・建築系の大学では国家公務員と言えば国土交通省かその外局に入ることを指すくらいです。
 
経済産業省はエネルギーの分野から住宅業界に入り込んで来ています。外局に資源エネルギー庁を持ち、増加の一途を辿る家庭の消費エネルギーを削減すべくZEHや燃料電池太陽光発電、蓄電池の住宅への普及を進めています。
 
環境省は省CO2の観点から住宅へアプローチをかけています。住宅エコポイントに参画し、省CO2賃貸住宅モデル事業は2016年に新規事業として開始されました。
 
他に住宅へ入ってきそうな省庁を勝手に予想してみると、健康住宅の普及で医療費を削減するとして厚生労働省、HEMSなどの通信規格を管轄する総務省などでしょうか。
 
各省庁の垣根を越えて行政一丸となってくれると非常にありがたいのですが、なかなかまだまだそうはいかなようです。
 
 
 
省庁違えば文化も違う 
それが顕著に現れるのが、やり方の違いです。
今までの住宅業界は法令は建築基準法、管轄する省庁は国土交通省、相手にしている特定行政庁はその地域の建築指導課だけでした。
 
ところが、経済産業省環境省を相手にするのは全く初めてです。
地方行政でもこういった事業は環境課、再生可能エネルギー課など、ほとんど馴染みがないお役所です。お互いに初めてなので初手から上手く噛み合いません。
 
公募の仕方、公募要領の書式、事業者登録の方法、申請書類の書き方、ファイリングの仕方、事業執行団体の選び方、全てに統一性がありません。
それは仕方のないことなのはよくよく分かります。
ですから初めて相手にする行政庁の事業の場合、要綱を読み込むのがなかなか大変です。書類を作成するのはもっともっと大変です。そして一回やったら次年度まで完全に忘れ去ります(笑)
 
 
 
書類作成は一夜漬け
自分の場合実際は一晩かけるわけではありませんが、申請書類のたぐいはギリギリまで手を付けず、必要な情報や書類が揃ってから一気に仕上げてしまうことがほとんどです。
ちょっとづつ手を付けて進めていくと、記憶があやふやになり、確認のため余計に時間が掛かってしまいます。
 
これは毎年の定型的な作業ではなく、毎年毎年どこかしらが異なっているため、毎回毎回それを覚えるのは返って不合理だからです。時間を用意して、要項を片手に、集中して書類に取り組みます。
もちろんそこまでに、確認済証や認定書などを手元に揃えておくなどして、準備する必要がありますが。
 
過去に4棟ほど長期優良住宅の補助金事業を実施した時は、並行して一気に4棟分の書類を作成しました。
ただ、ちょっと書類4式は多かったみたいで、並行だと取り違えそうになりましたので、直列で行った方が良かったですね。
これは、個人的な感想なので、他の人に当てはまるとは限りませんが。
 
 
さて、本年も長期優良住宅のグリーン化事業の実績報告が控えています。
締め切りがちょっと先なので、今回は事前に全部手を付けてしまおうかと思っています。