省エネ基準義務化は「規制」それとも「権利」?
エネルギー事情を取り巻く環境は日々進歩しており、私達のような工務店もその流れに無関係ではありません。
ですが、この流れを積極的に捉え、省エネに貢献するとともに断熱改修の分野を盛り上げたいと思っています。
眼からウロコがほとばしる
先日、とあるセミナーに参加し、目からウロコがビーム(荷電粒子砲)のようにほとばしりそうになる話を聞きました。E:ハイメガランチャー(ウロコ)。祝!2020年省エネ基準義務化!!
ご存知の方にとっては常識ですが、一般の方には馴染みが薄い住宅業界のホットな話題に2020年の省エネ基準義務化があります。これまで努力目標としてきた、または大型の商業施設や大規模ビルダーに限っていた規制ですが、住宅を含む全ての建築物に適応されます。そのために建築物省エネ法という新しい法律を作り、数々の制度や物差しを制定し、一般のユーザにも周知を図るべく補助金事業という形で認知度を向上させています。約1割の既に対応を始めていていつでもどんと来いや、の先進的工務店。残り9割のまだ残り4年はある、とタイム・リミットが来たら考える一般的工務店。どちらが良いとは一概に言えませんが、黒柳建設はもちろん前者です。そして、恐らく両者とも本音では「めんどくせえなぁ」と消極的反対な立場だと思います。義務化は権利、反対なんてとんでもない!?
ところが、肉食系工務店の考え方は「省エネ基準義務化は建築業界にとって、規制ではなく『権利』。積極的に活用すべく歓迎するべきで、反対するなどとんでもない」と、ちょっとぶっ飛んでいます。しかし、確かに「なるほど」と頷ける理屈ですので、ここでご紹介します。そもそも何が義務化されるの?
省エネ基準とは簡単に言えば、住宅の断熱性能と設備の省エネ性能を向上させ、エネルギー消費量を削減することにあります。具体的には断熱材と省エネ設備です。京都議定書、COP22などの国際会議での公約を果たすべく、国は具体的なロードマップを描かなくてはならなくなりました。そこで、省エネ対策がほとんどされておらず野放しになっている家庭部門のエネルギー消費量削減を、本気で手を付け始めています。そこで、まずは新築住宅からというわけです。家庭で消費されるエネルギーは、給湯・冷暖房・照明・換気・家電に5分類され、この中で住人によって誤差の閾値が少ないのが前4項目です。エネルギー使用量の評価基準はこの4項目に対して行われます。このなかで冷暖房・給湯・換気は住宅の断熱性能に大きく影響するため、機器効率の向上と共に断熱性能の向上が重要になるのです。そこに最低基準の規制をかけ、強制的に省エネ仕様の住宅しか新築できなくするのが2020年の義務化です。当然、仕様が向上するため建設費が増大し、家が高くなります。高くなると売れにくくなる(と思い込んでいる)ので、反対するのです。あと、単純に書類仕事が増えて手間だからです。また、国内に5000万戸の既存住宅には今のところ適用されません。ですが間違いなくJOJOに奇妙な段階を踏んで引き締めにかかっていくと睨んでいます。ここでCM 黒柳建設の対応状況
黒柳建設は2000年からそのレベルの住宅を建てており、2016年現在はそれよりさらに性能の良い住宅を建てているので、義務化は一見関係ないと思われます。実際、手続きが多少煩雑になる程度と見込んでおり、その手続も現時点で出ている物に関してはすでにひと通り経験済みです。よっ、経験者(豊富だとは言っていない)
しかし、義務化により最低基準の底上げがされると、今まで有してきた性能の差別化による優位性が弱くなるのではないかとの懸念がありました。「いい家をつくる会」ではずっと以前からカタログスペックの性能頼みの住宅づくりではなく、『住み心地』を追求した家づくりを模索しており、今では涼温換気に辿り着いています。快適と省エネを高いレベルで両立しているため、今までに住まれたお施主様には大変好評を頂いています。さすが、「いい家をつくる会」は違います(自画自賛)
目からウロコ、肉食系工務店の発想
ところが、肉食系工務店の発想はひと味違います。「泣かぬなら、食べてしまおう、ホトトギス」(肉食系工務店)
要約するとこういうことです。ギレン総統の台詞ではありませんが、これまでエネルギーコストはエネルギー会社の言いなりでした。しかし、エネルギー消費量をコントロールすることで、エネルギーコストの主導権をこちらに奪えます。実際、光熱費を未来永劫ずっと払うことを考えると、高効率機器や断熱工事の金額は充分に元が取れます。これまで省エネを推進し光熱費を節約することに意欲を持っていましたが、そのことが他所のパイを食べに行くと、いう捉え方はありませんでした。「他所のパイを食べに行く」のはブルー・オーシャン戦略やマーケティング戦争などの書籍では、基本中の基本と説かれている戦略です。ガリバーの喉元を食らうのは、小人の鋭い一撃なのです。強者の戦略は王道覇道、弱者の戦略はゲリラ戦です。電力屋とガス屋がエネルギーチョイスでバトルしている間に、大本の蛇口を付け替えてしまい、ちょろちょろとしか流れないようにできるのは、隣接業界の工務店です。しかも、省エネ・省CO2・ストック循環型社会と大義は我にあります。工務店のエネルギー革命
確かに、工務店・建築会社の本分は工事にあると決めつけていて、エネルギーの代金はお施主様が使っただけ払うものという感覚があり、当事者意識が薄かったのは事実です。地域一番店とか○○の分野ではシェアナンバーワンとか、狭い範囲に自らを押し込んでしまっていたのかもしれません。もちろん自然素材や無垢の材料にこだわってそれだけで勝負していくのもアリだと思います。しかし、涼温換気を有し、省エネ断熱で快適な住み心地を追求する「いい家をつくる会」と黒柳建設の立ち位置はエネルギー業界のパイが手を伸ばせば届く距離です。であれば、積極的に手を伸ばしていくのにやぶさかではありません。『規制』ではなくて『権利』なら、モチベーションも湧いてきます。「我々は故あれば簒奪するのさ!」
すでに気分は肉食モードです。(いや、肉食と言うより、デラーズ紛争のあの人です)あと、お世話になっている電力屋さんガス屋さん、ごめんなさい。先に謝っておくことにします。