長期優良住宅から始まった躍進[後編]
今回の日記を書いていて、当時の写真を見返しました。
あれから丸4年が経過していますが、日本も黒柳建設も大分様変わりしたと思います。
勉強漬けだった初の海外視察
(クリスマス・マーケットに賑わうフライブルグ市内)約1週間で上記の内容を次から次へと駆け足で回る視察でした。午前と午後と夜の3部制で、移動はバス・トラム(路面電車)・歩きと市民の皆さんと同じ目線です。移動していても楽しい街を体感できました。これもまちづくりの狙いだというのですから、驚かされます。この辺りの詳細は私が解説するより、各種の文献に詳しいです。ドイツは環境先進国としても名高く、特に私たちが訪れた南部の小じんまりとした街・フライブルグは世界中から街づくりの視察に訪れるほど有名です。これによって、「視察観光」という新しい形態の産業が認知される程の観光需要があるとのことでした。こうして既に動いている枠組みだけを見ると、とてつもなく上手く回っているシステムだと惚れ惚れしました。※視察観光とは、ある優れた取り組みに対する視察を世界中から受け入れ、宿泊・飲食・土産物などを充実させることで、海外からの視察客にじゃんじゃんお金を使ってもらったり、また来たいと思わせてリピーターになってもらい本来の観光目的での来訪を促すことです。日本とは根本的に異なるドイツ流の合理的な取り組みにひたすら関心し、なんとか黒柳建設の家づくりにも取り入れられないか苦心する日々が続きました。(外断熱住宅的にはグラスウール・ロックウールはあまり好きではないのですが)(世界中からの省エネ視察団が訪れるヴォーバン地区)ドイツは素晴らしくて日本はダメだ、などと分かりやすく落ち込んだわけではありませんが、理想となるような素晴らしい物を見た後に明日から何をすればいいのかとちょっと途方に暮れたのを覚えています。そのくらいに視点が変わりました。一緒にドイツに行った工務店仲間は皆衝撃を受け、帰国後すぐにその視察を主催したグループへ加盟していました。熱い志を持ったグループでしたから、密度の濃い研修を毎月受けているそうです。また、こういったグループが各地でどんどん勢力を拡大しつつあるので、ヨーロッパ流や北欧風の家づくりもどんどん日本に取り入れられてきていることが、焦りに拍車をかけます。(フライブルグ中央に位置する大聖堂)それはそれとして、ドイツのビールは最高でした、はい。もちろん、食事も。国の狙いを読み取り活かす工務店へ
ドイツから帰国し、しばらく葛藤の日々を送り、気がついたらお客様や黒柳建設だけでなく、地域や日本全体を見るようになり、「視点が変わった」と実感しました。さすがに国の方針や、様々な制度はイチ工務店の力ではどうにもなりません。その代わりに、できるだけそういった情報のキャッチに務めるのと、どうやって先を読み、流れを追いかけたり先回りできるか、をとことん意識するようになりました。今までは個々の木ばかり見ていたのが、ドイツへ行って森だけを外から見るようになり、両方の視点を手に入れたことで、外から森を見て中に入って木を見るようになりました。また森を手入れしようとしている人のことも気にかけて、次は何をしようとしているのかを予想するようになりました。そのような視点が私たちに備わったことに気が付いたのです。これは大変大きな進化です。いい家はあらゆる面で「いい家」だと再確認
これまでは、高気密高断熱の外断熱工法で、暖かくて涼しくて住み心地がすごく良い家だよ、という謳い文句が大部分を占めていました。住み心地は大事なことですが、知らない人にとってはあまり響かなかったことも事実です。特に、黒柳建設は「いい家をつくる会」の書籍を読んでいるお客様割合が、会員の中ではかなり少ない部類です。外断熱や高気密高断熱、「いい家をつくる会」のことを全くご存じないかたもご来社されます。そのようなお客様に「いい家」がなぜ「いい家」なのかを説明するのは、大変難しいことでした。ですが今では、さらに一歩進んで「なぜこの家がいい家なのか」をもっと別の言葉でも語れるようになったのです。「暖かくて涼しくて住み心地が良い家」はなぜ「いい家」なのか?
この問いに対して、今ではこんなにたくさんの視点から、明らかに答えることができるようになりました。どれも説得力を持ち、未来に希望が持てる要素をたくさん抱えています。大勢のOB顧客様のフォローを続けていても、この考えが実に正しかったと実感しています。2000年に「いい家をつくる会」と出会い、外断熱の家づくりに舵を切った時点から転換と飛躍は続いていると言えます。教え伝えることの大切さ
これまでやってきたことが実際にお客様のためになっていることが、たくさんのOB顧客様に教えて頂きました。そして、これからはこのことをより大勢の人に、特にご地域にお住まいの身近な人に知ってもらいたいと強く思います。国の統計によれば、全国5000万棟の既存住宅のうち、その実に95%が断熱基準を満たしていません。このような家にお住まいの、暖かくて涼しい家を知らない方にも、私たちの家づくりを知って頂きたい。そのために、どうやって伝え広めていくか、どんな内容なら分かりやすいか、どんな話なら興味を引かれるか、今の私たちの具体的な課題はそこにあります。そう思っている人の数を少しでも減らしていきたい、そして健康で快適に幸せな毎日を送って欲しい。それが、様々な経験と知見を得た私たちの一番の願いです。