外断熱の注文住宅を建てる建築会社2代目の頭の中

住み心地とか、住む人の健康とか、家族の安心安全とか、大きな資産とか、喜び感謝クレームとか、様々に満ちている業界で色々と考えています。地域のため、日本のため、世界のため、御施主様のため、社員さん職方さん業者さん大工さんのため、自分だけにしかできない事がどんどん増えていく毎日は刺激的です。

長期優良住宅から始まった躍進[後編]

今回の日記を書いていて、当時の写真を見返しました。

あれから丸4年が経過していますが、日本も黒柳建設も大分様変わりしたと思います。

 

「海外視察」と言うと普通は名目にかこつけたご褒美旅行なのですが、最初から最後まで徹頭徹尾「勉強」しかない海外視察も悪くはないですね。こんにちは、東京都小金井市で外断熱・涼温な家を建てる工務店、黒柳建設の国策担当/WEB担当/システム管理者/営業/現場監督/アフターメンテナンス/OB顧客様係の黒柳一聡です。

 

勉強漬けだった初の海外視察 

さて多少前後しますが、2012年の冬に自分と社長の2人はクリスマス・シーズンの極寒のドイツへ断熱建築とエネルギー情勢のを視察する集まりに何名かの仲間と参加しました。

  

 (クリスマス・マーケットに賑わうフライブルグ市内)
 
 
 
  • 壁いっぱい天井いっぱいのグラスウールやセルロースファイバーで詰められた超々高断熱仕様
  • 地方自治体とエネルギー会社と地域産業の関わり
  • 建築家(マイスター)が主導権を握る住宅のエネルギー設計
  • 低価格で便利な地域暖房
  • 省エネ度合いによって上下する住宅ローンの金利制度
  • エネルギー消費量のモノサシ・エネルギーパス制度
  • エネルギーパスと住宅ローンを活用した断熱改修優遇制度
  • 地場産業を振興する行政と市民の取り組み
  • 林業と建築の深くて近い関わり
  • 超高性能薪ストーブが生まれる土壌
  • 築年数が経ちメンテをするほど価値の上がる住宅の査定
  • 築15年のモデルハウスが珍しくない住宅展示場
  • しかも断熱性能は今でも充分通用するレベル
 
 
約1週間で上記の内容を次から次へと駆け足で回る視察でした。
 
午前と午後と夜の3部制で、移動はバス・トラム(路面電車)・歩きと市民の皆さんと同じ目線です。
 
移動していても楽しい街を体感できました。これもまちづくりの狙いだというのですから、驚かされます。
 
 
 
この辺りの詳細は私が解説するより、各種の文献に詳しいです。
 
ドイツは環境先進国としても名高く、特に私たちが訪れた南部の小じんまりとした街・フライブルグは世界中から街づくりの視察に訪れるほど有名です。
 
これによって、「視察観光」という新しい形態の産業が認知される程の観光需要があるとのことでした。
 
こうして既に動いている枠組みだけを見ると、とてつもなく上手く回っているシステムだと惚れ惚れしました。
 
※視察観光とは、ある優れた取り組みに対する視察を世界中から受け入れ、宿泊・飲食・土産物などを充実させることで、海外からの視察客にじゃんじゃんお金を使ってもらったり、また来たいと思わせてリピーターになってもらい本来の観光目的での来訪を促すことです。
 
 
 
 
日本とは根本的に異なるドイツ流の合理的な取り組みにひたすら関心し、なんとか黒柳建設の家づくりにも取り入れられないか苦心する日々が続きました。
(外断熱住宅的にはグラスウール・ロックウールはあまり好きではないのですが)
 
 
(世界中からの省エネ視察団が訪れるヴォーバン地区) 
 
 
ドイツは素晴らしくて日本はダメだ、などと分かりやすく落ち込んだわけではありませんが、理想となるような素晴らしい物を見た後に明日から何をすればいいのかとちょっと途方に暮れたのを覚えています。
 
そのくらいに視点が変わりました。一緒にドイツに行った工務店仲間は皆衝撃を受け、帰国後すぐにその視察を主催したグループへ加盟していました。
 
熱い志を持ったグループでしたから、密度の濃い研修を毎月受けているそうです。
 
また、こういったグループが各地でどんどん勢力を拡大しつつあるので、ヨーロッパ流や北欧風の家づくりもどんどん日本に取り入れられてきていることが、焦りに拍車をかけます。
 
 
(フライブルグ中央に位置する大聖堂) 
 
 
 
それはそれとして、ドイツのビールは最高でした、はい。
 
もちろん、食事も。
 
 
 

国の狙いを読み取り活かす工務店

ドイツから帰国し、しばらく葛藤の日々を送り、気がついたらお客様や黒柳建設だけでなく、地域や日本全体を見るようになり、「視点が変わった」と実感しました。
 
 
 
さすがに国の方針や、様々な制度はイチ工務店の力ではどうにもなりません。
 
その代わりに、できるだけそういった情報のキャッチに務めるのと、どうやって先を読み、流れを追いかけたり先回りできるか、をとことん意識するようになりました。
 
 
 
今までは個々の木ばかり見ていたのが、ドイツへ行って森だけを外から見るようになり、両方の視点を手に入れたことで、外から森を見て中に入って木を見るようになりました。
 
また森を手入れしようとしている人のことも気にかけて、次は何をしようとしているのかを予想するようになりました。
 
 
  • その人たちは日本という森をどういうふうに手入れしているのか
  • どんな森にしたいと考えているのか
  • そのためにはどんな木を私たちは植えたらいいのか
  • そして隣の森たちとどんな影響を及ぼしあうのか
  • 今現在だけでなく森の未来はどうなるか
  • どうすれば森の理想的な将来像へ近づけるか
 
 
そのような視点が私たちに備わったことに気が付いたのです。
 
 
これは大変大きな進化です。
 
 
 
 
 
 

いい家はあらゆる面で「いい家」だと再確認

これまでは、高気密高断熱の外断熱工法で、暖かくて涼しくて住み心地がすごく良い家だよ、という謳い文句が大部分を占めていました。住み心地は大事なことですが、知らない人にとってはあまり響かなかったことも事実です。
 
特に、黒柳建設は「いい家をつくる会」の書籍を読んでいるお客様割合が、会員の中ではかなり少ない部類です。
 
外断熱や高気密高断熱、「いい家をつくる会」のことを全くご存じないかたもご来社されます。
 
そのようなお客様に「いい家」がなぜ「いい家」なのかを説明するのは、大変難しいことでした。
 
 
 
ですが今では、さらに一歩進んで「なぜこの家がいい家なのか」をもっと別の言葉でも語れるようになったのです。
 
 
 
「暖かくて涼しくて住み心地が良い家」はなぜ「いい家」なのか?
この問いに対して、今ではこんなにたくさんの視点から、明らかに答えることができるようになりました。
 
 
快適、健康、幸福、といった家の大事な役割のこと。

省エネ、環境、省CO2、といった世界規模の地球環境のこと。

地域経済、雇用、家計の支出、といったお住まいの地域の活性化につながること。

資産価値、節税対策、相続問題、といった家の価値を維持向上すること。

シニア生活、医療費、病気リスク、といったライフバリューを豊かにすること。

各種減税、補助金、助成制度、といった国策に沿った優遇を受けられること。

少子化、人口減少、経済の衰退、といった問題へのカウンターアタックの一翼を担うこと。

 

どれも説得力を持ち、未来に希望が持てる要素をたくさん抱えています。
 
大勢のOB顧客様のフォローを続けていても、この考えが実に正しかったと実感しています。
 
2000年に「いい家をつくる会」と出会い、外断熱の家づくりに舵を切った時点から転換と飛躍は続いていると言えます。
 
 
 
 
 

教え伝えることの大切さ

これまでやってきたことが実際にお客様のためになっていることが、たくさんのOB顧客様に教えて頂きました。
 
そして、これからはこのことをより大勢の人に、特にご地域にお住まいの身近な人に知ってもらいたいと強く思います。
 
東京都小金井市、中央線の沿線である当社の立地は、三多摩と呼ばれるエリアに非常に大勢の潜在的なお客様がいらっしゃいます。
 
国の統計によれば、全国5000万棟の既存住宅のうち、その実に95%が断熱基準を満たしていません。
 
 
 
このような家にお住まいの、暖かくて涼しい家を知らない方にも、私たちの家づくりを知って頂きたい。
 
そのために、どうやって伝え広めていくか、どんな内容なら分かりやすいか、どんな話なら興味を引かれるか、今の私たちの具体的な課題はそこにあります。
 
 
 
「家なんて夏は暑くて、冬は寒い、梅雨は湿気ってカビが生える、それが常識」

 
そう思っている人の数を少しでも減らしていきたい、そして健康で快適に幸せな毎日を送って欲しい。
 
 
それが、様々な経験と知見を得た私たちの一番の願いです。