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外断熱の注文住宅を建てる建築会社2代目の頭の中

住み心地とか、住む人の健康とか、家族の安心安全とか、大きな資産とか、喜び感謝クレームとか、様々に満ちている業界で色々と考えています。地域のため、日本のため、世界のため、御施主様のため、社員さん職方さん業者さん大工さんのため、自分だけにしかできない事がどんどん増えていく毎日は刺激的です。

国の住宅政策を読み解く[前編]公共事業と土木建設

偉そうに大上段から語っていますが、ご笑覧下されば幸いです。

 

大学は理工学部土木工学科でしたので、友人知人は建設業界にいるはずです。ただ今でも連絡を取り合うのは部活やサークルの仲間ばかりなので、全然コネっぽいものはありません。 

 

日本の住宅政策は、土木建設分野の公共事業に隠れているようですが、実際は景気対策上重要な役割を果たしてきたと思います。

必要ない公共工事でゼネコンに税金を投下することは、その側面だけを切り取ると社会悪です。しかし、公共事業には必ずしもそれだけとは言い切れない良い面もたくさんあります。

私が大学で学んだ2000年頃にはすでに、国内は国土開発から国土の維持管理へとシフトしており、これからの君たちの仕事は海外にインフラを広めることだ、とも言われたものです。

 

 

 

古き良き伝統・景気対策には公共事業は正しいのか?

世界は公共事業軍事産業
世界を見ても景気対策において多くの国が行う定番中の定番が、軍事費の増大です。特にアメリカ、オメーはちっと自重しろ。
 
軍需産業軍産複合体が肥大化したアメリカでは、東西冷戦時に莫大な費用を軍需産業に投下し続け双子の赤字と言われる貿易赤字財政赤字を生み出しました。クリントン時代にある程度解消されたのですが、ブッシュ時代にイラク戦争などで再発し優等生オバマ前大統領がヒーヒー言って火消しに躍起になっていました。
 
さて、トランプ大統領はどうするのでしょうか。すでに世界にケンカを売っているような気がしますが。
 
 
軍需産業は裾野が広く、新技術の開発などで民間にも波及するなど副次的な効果も高いため一概に悪いとか良いとか判断が難しいのです。軍事産業の民生利用ではインターネットやカーナビ、電子レンジなどが有名です。
 
日本では防衛費GDP1%の制限やアメリカの庇護もあり、防衛産業をあまり育てることができず、その代わりに土木業を中心とした建設業界に景気対策を見出しました。
 
 
土木工学は英語でCivil Engineering (市民工学)と言い、Military Engineering (軍事工学)の対極に位置する分野です。従事する人は多いため経済波及効果は高く、スーパーゼネコン5社を始めとする数多くの建設会社が高い技術力を持って、日本の国土を開発してきました。その高い技術力と経験を武器に世界中のインフラ建設に飛び出しているのもスーパーゼネコンたちです。
 
ダム・橋・高速道路・新幹線など、公共事業を行えば、地元は潤い便利になり、行政はその勢力を拡張し、政治家は票が入ると良いことづくめですが、維持保全である運用段階に入ると大幅な赤字を計上したり、政官民の癒着の温床となったり、工事を行うこと自体が目的となったりで徐々にその意義が問われるようになり、減少傾向にありました。
 
しかし、2011年の東日本大震災で時の政府は国土強靭化計画を打ち出し、防災を旗印にインフラの再構築に取り掛かり、地方行政もそれに続いています。実際、無駄だと言われていた高さ15メートルの防波堤が津波から住民を守った、という実例があると「無駄な公共事業」と一括りにはできないところがあります。
 
また、日本国内の公共事業は一部では飽和状態との批判もあるので、スーパーゼネコンたちは国外へその活路を見出し、新幹線システムの輸出に代表されるような官民一体のインフラパッケージの輸出に取り組んでいます。
 
近年、インドネシアで中国に高速鉄道の受注で競り負けたのは記憶に新しいですが、結局早々に頓挫しかかっているとのことで、高額だけど高い信頼性を持つ日本の新幹線の評判が高まったのは皮肉です。
 
 
 
残念ながら、公共事業の有用性が示されると、景気が悪くなったら公共事業、と考えが固定化してしまい、税金で無駄なハコモノを建てることが目的になってしまった例も多いと言えます。
ですが、本来公共事業とは、日本国民の公共の福祉のために行うものですから、必要とされる事業はまだまだあります。しかし、今は国にも地方自治体にもお金が無い。
 
 
 
そんななか、旧来の箱物行政から脱却し、PFIなど民間の資本を活用して、見事な公共事業をやり遂げた事例もあります。 
 
 

錬金術のような建設費の捻出

例えば、池袋駅からほど近い豊島区役所では、2015年の5月に総工費430億円かけて新庁舎がオープンしましたが、税金投入は実質ゼロ円で新庁舎を建設したと話題になりました。
同様の手法で渋谷区役所も新庁舎を建設中であり、こちらは2019年にオープンする予定です。
一体どんな魔法を使ったのでしょうか? 
 
渋谷区の場合
旧区役所と旧渋谷公会堂の敷地の一部に定期借地権を設定し、民間事業者から対価を得ることでその建設費負担をゼロとしています。事業者には三井不動産が選定され、分譲マンションを建設・分譲します。すでに旧庁舎は解体が完了、2016年の9月より新築工事が開始しています。
 
 
豊島区の場合
新庁舎の上層階を権利交換で地権者の住宅とし空き部屋を販売することと、旧庁舎の跡地を定期借地で民間にも貸与することで、数百億円もの建設費を創出しました。
 
 
 
両区とも財政に余裕があるわけではなく、区単独では建設費を捻出できず新庁舎の建設は棚上げされ続けてきましたが、老朽化と震災の損傷で建て替えは必須でした。
 
こうした民間の資力を活用することにより、税金を使わずに新庁舎を建設することができたことで、公共事業の新しい形が示されています。
 
行政、民間企業、利用者の三者に利益のある素晴らしい施策だと思いました。
最大多数の最大幸福で、公共の福祉に寄与し、様々な価値を増進することができるコロンブスの卵です。
公共事業と言えども、やればできるんですね。
 
 
 
 

公共事業としての住宅取得

公共事業は国や地方自治体がイニアシティブを握りましたが、住宅行政はどちらかと言うと民間や市場任せです。ですが、旧住宅金融公庫のように、エンドユーザーが住宅取得のための資金を得やすい状況を整備したり、各種の規制を緩和して住宅用地を拡張したりして、ある程度意図的にマイホーム化を促してきたと読めます。
 
ちなみに、戦前の日本人の借家率は8割を超えていたという記録が残っています。
かなりの人が一生借家住まいだったのを、住宅ローンを利用することで持ち家族になれるということで、「夢のマイホーム」が現実のものとなりました。
 
「いつかは我が家を手に入れる」という考え方が、割りと普通の感覚になってきました。
 
意図的なのか、偶然なのかは、当時の文献をあたるか当事者たちに聞いてみないとわかりません。
 
次回は「夢のマイホーム」に目を向けてみます。
 
 
 
 
※次回の[中編]から分離して、[前編]として再編集しました。