国の住宅政策を読み解く[前編]公共事業と土木建設
偉そうに大上段から語っていますが、ご笑覧下されば幸いです。
古き良き伝統・景気対策には公共事業は正しいのか?
世界は公共事業=軍事産業
世界を見ても景気対策において多くの国が行う定番中の定番が、軍事費の増大です。特にアメリカ、オメーはちっと自重しろ。軍需産業、軍産複合体が肥大化したアメリカでは、東西冷戦時に莫大な費用を軍需産業に投下し続け双子の赤字と言われる貿易赤字と財政赤字を生み出しました。クリントン時代にある程度解消されたのですが、ブッシュ時代にイラク戦争などで再発し優等生オバマ前大統領がヒーヒー言って火消しに躍起になっていました。さて、トランプ大統領はどうするのでしょうか。すでに世界にケンカを売っているような気がしますが。日本では防衛費GDP1%の制限やアメリカの庇護もあり、防衛産業をあまり育てることができず、その代わりに土木業を中心とした建設業界に景気対策を見出しました。錬金術のような建設費の捻出
例えば、池袋駅からほど近い豊島区役所では、2015年の5月に総工費430億円かけて新庁舎がオープンしましたが、税金投入は実質ゼロ円で新庁舎を建設したと話題になりました。同様の手法で渋谷区役所も新庁舎を建設中であり、こちらは2019年にオープンする予定です。一体どんな魔法を使ったのでしょうか?渋谷区の場合
旧区役所と旧渋谷公会堂の敷地の一部に定期借地権を設定し、民間事業者から対価を得ることでその建設費負担をゼロとしています。事業者には三井不動産が選定され、分譲マンションを建設・分譲します。すでに旧庁舎は解体が完了、2016年の9月より新築工事が開始しています。豊島区の場合
新庁舎の上層階を権利交換で地権者の住宅とし空き部屋を販売することと、旧庁舎の跡地を定期借地で民間にも貸与することで、数百億円もの建設費を創出しました。両区とも財政に余裕があるわけではなく、区単独では建設費を捻出できず新庁舎の建設は棚上げされ続けてきましたが、老朽化と震災の損傷で建て替えは必須でした。こうした民間の資力を活用することにより、税金を使わずに新庁舎を建設することができたことで、公共事業の新しい形が示されています。行政、民間企業、利用者の三者に利益のある素晴らしい施策だと思いました。最大多数の最大幸福で、公共の福祉に寄与し、様々な価値を増進することができるコロンブスの卵です。公共事業と言えども、やればできるんですね。半公共事業としての住宅取得
公共事業は国や地方自治体がイニアシティブを握りましたが、住宅行政はどちらかと言うと民間や市場任せです。ですが、旧住宅金融公庫のように、エンドユーザーが住宅取得のための資金を得やすい状況を整備したり、各種の規制を緩和して住宅用地を拡張したりして、ある程度意図的にマイホーム化を促してきたと読めます。ちなみに、戦前の日本人の借家率は8割を超えていたという記録が残っています。かなりの人が一生借家住まいだったのを、住宅ローンを利用することで持ち家族になれるということで、「夢のマイホーム」が現実のものとなりました。「いつかは我が家を手に入れる」という考え方が、割りと普通の感覚になってきました。意図的なのか、偶然なのかは、当時の文献をあたるか当事者たちに聞いてみないとわかりません。次回は「夢のマイホーム」に目を向けてみます。※次回の[中編]から分離して、[前編]として再編集しました。