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外断熱の注文住宅を建てる建築会社2代目の頭の中

住み心地とか、住む人の健康とか、家族の安心安全とか、大きな資産とか、喜び感謝クレームとか、様々に満ちている業界で色々と考えています。地域のため、日本のため、世界のため、御施主様のため、社員さん職方さん業者さん大工さんのため、自分だけにしかできない事がどんどん増えていく毎日は刺激的です。

国の住宅政策を読み解く[後編]省エネ住宅の普及

ビジネスの話題 既存顧客対応 国策・補助金・助成事業

省エネ、省CO2、低炭素、低燃費、などなど高性能住宅を修飾する言葉はたくさんありますが、なんとなく「省」とか「低」はマイナスのイメージの方が強いと感じます。

その点「長期優良住宅」というネーミングは素晴らしいです。

「性能向上住宅」も捨てがたいのですが、どちらも前向きで優れているイメージが湧きます。

 

日本の既存住宅の95%が省エネ基準不適合の消エネ住宅であることに時折びっくりしてしまいます。

 
 
住宅・建築業界に入った時から、高気密高断熱の外断熱工法の木造住宅を主に扱ってばかりでしたので、省エネ基準不適合な建物がここまでたくさんあるとは、知識としてはわかっていますが、実感がわきません。
 
自分自身が現場監督したり、OB顧客様の訪問や点検をのべ何百件として来ましたが、そのほとんどが高性能住宅だったからです。 
 
前回に続いて、近年の住宅政策をあれこれインプットして、私が感じていることを取りまとめたアウトプットです。相変わらず後ろも横も見ないで突っ走っている文章であることを、最初にお詫び致します。
あとすみません、若干商売っ気が強い文章だと感じられるかもしれません。
 
 
 

未開の島で靴を売れるか

営業の分野では有名な話ですが、未開の島に辿り着き裸足の原住民を見た二人の靴のセールスマンの話です。
 
二人共「なんてこった!この島の人たちは靴をはく習慣がないじゃないか!!」と驚きます。
 
片方は「誰も靴を必要としていない、これでは靴が1足も売れない!」と嘆き、
もう1人は「これでは全員に1足ずつ靴を売ることができる、売り放題じゃないか!!」と大喜びしたという話です。
(ポジティブ思考の人は超強ぇー)
 
需要が無いのなら作り出せばいい、そうすれば先行者利益で独占できる、という夢の様な話ですが、そんなに簡単な話ではありません。
ですが、そのように考えた人だけがそこに辿り着けることもまた事実です。
二股ソケットの松下幸之助しかり、ウォークマンSONYしかり、iPodスティーブ・ジョブズしかりです。
 
さて、そんな裸足の島民と同じように、需要は(ほとんど)無いが可能性は膨大な市場が私たちの前に存在します。
 
断熱未改修の既存住宅のことです。
 
 
 
 

5000万戸の既存住宅の95%が不適合

現在国内にある5000万戸の住宅ストックのうち、平成11年基準の断熱性能を持つものはわずか5%(約250万戸)、また平成四年基準、昭和55年基準のどちらも満たさないいわゆる無断熱の建物は約4割に上ります。
 
最新の平成28年基準は平成11年基準と実質ほとんど変わらないので、2020年に省エネ基準が義務化されると、既存住宅の95%(4500万戸)以上が断熱性能・省エネ性能で既存不適格になります。
 
また最新の平成28年基準を遥かに超え、気密性能も高い黒柳建設の家づくりから比べると平成11年基準未満の断熱性能は「(断熱材が)入ってないよりマシ」程度の住み心地であり、下手に結露して構造材が腐ったりシロアリに食われる危険性を考慮すると、「(断熱材が)入ってない方がマシ」だったりします。
 
前回の話題である住宅ストックを活用すれば、建設に掛かるコストは圧縮できますがエネルギー使用というランニングコストは悪いままです。燃料費というエネルギーコストの原価が上がる一方なので、資料エネルギー量を減らさなくてはなりません。
 
 
そうすると国としては4500万戸の断熱不適合な既存住宅について対策を施さなくてはなりません。
 
 
そこに「未開の島に靴をはく習慣を広めるセールスマン」の話が当てはまります。
 
まさに、全国4500万戸の省エネ基準不適合な住宅は、断熱改修工事を待つ大切なお客様、と見ることもできます。あとは断熱性能の向上がどのようなものであるかをわかりやすく知っていただくこと、が重要な課題となってきます。
 
すでにオピニオンリーダー的な方々が各地に誕生しつつあり、先駆者として様々な実践を重ねておられます。
 
 
投網一発・・・!
 
根こそぎ・・・
 
一瞬で持って行かれた・・・!
 
「人望」という名の・・・・・・
 
魚群を・・・・・
某最強伝説現場監督
 
そうだ、持って行くんだ・・・・・
 
彼みたいに・・・!
 
(・・・・・ザワザワ・・・・・ざわざわ)
 
 
 
 
エネルギー消費(浪費)型住宅からの脱却
2011年に発災した東日本大震災は様々な意味で日本という国を根底から変えてしまいました。
表向きは平穏な日常を取り戻したかに見えていますが、住宅業界は家のエネルギー消費に対する答えを求められるようになりました。
 
ハウスメーカースマートハウスコモディティ化し、消費するエネルギーより発電することで分かりやすい解を提示し、今はZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)がその後押しをしています。
 
黒柳建設は「いい家をつくる会」の理念を共有し、住み心地を第一に考えていくと基本的な断熱性能の確保に立ち戻ることを再確認し、省エネに務めた住み心地がしっかりと良い家づくりをその答えとしています。
 
大手ハウスメーカーが頼みとしている太陽光発電燃料電池エネファーム)、住宅用蓄電池、HEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)は所詮家電と同じ機械であり、建物の性能を置き去りにしていました。
 
しかし近年ではZEH基準の中に断熱性能の強化が必須とされたため、ZEHに対応した建物の基本性能も向上しています。そしてさらに、そういった高性能高価格な建物がしっかりと売れているということで、新築の住宅は確実に高性能化してきていると言えます。
 
ですが、年間着工棟数が仮に100万棟だったとしても、既存住宅5000万棟を全て建て替えるには50年かかる計算で、とても現実的ではありません。
 
 
 
新築住宅は基準を義務化して一段落?
自分のブログ日記でも何度も出て来ますが、2020年に新築住宅も省エネ基準が義務化となり、非住宅やビルは既にその対象となっています。とりあえずはこれで日本にも省エネ義務レベルが設定され、徐々に周知され定着していくこととなるでしょう。
 
その後恐らくですが、住宅全てを対象とする施策はそこで一旦トーンダウンすることになると思います。これまで通りトップランナーに牽引させる方針は継続すると思いますが、省エネ基準を段階的に引き上げていくことは当面の間ないと考えています。
 
なぜなら、国の本命は国内住宅ストックの95%を占める不適合な建物にあると見ているからです。
年々着工棟数が減少する新築住宅はそれなりの性能を満たすようになり、その目処もついています。
 
それが一段落したところで、野放しになっている既存住宅に徐々に着手する方が全体の省エネルギー化には効果的だからです。
 
 
 
マーケティング的に思考を適用する
流行を作り出す一連の流れは、マーケティングで行うのが最近の流行りです。
 
(この思考がすでにマーケッターにやられていることも否めない)
 
マーケティングの手法では、流行を作り出す際にはまずトップ5%ほどに繰り返し限定的なアプローチをして橋頭堡を構築します。
 
インフルエンサーとかオピニオンリーダーとか呼ばれるトップ5%にはかなりのフォロワーがいるため、自然と情報は拡散されます。
 
実際に影響を受けて流行を追いかけるフォロワーも出てきたところで、マスの広告・告知を打って一気に知名度を高めます。
 
そこで先行して情報を受け取っていたフォロワーを囲い込み、爆発的に流行を拡散します。
マスコミやメディアで繰り返し取り上げられ、広告を打たなくても毎日のようにどこかで話題になるのもこの頃です。
 
そして最後まで動かない層には「もうみんなやってるよ」という同調圧力をうまく利用したアプローチを仕掛けて、ほぼすべての層に行き渡らせることが完了します。
 
 
 
 
今夏大ヒットし、歴代邦画第2位の記録を打ち立てた新海誠監督のアニメ映画「君の名は。」が拡散していった経緯もこの手法に沿っています。
 
秒速5センチメートル」は言い様のない感情が湧いて来て、表現できない想いに駆られる。
 
 
 
その少し前に公開された庵野秀明監督の「シン・ゴジラ」も途中までは同じような流れを踏んでいたのですが、途中から「君の名は。」に喰われてしまいました。
 
さらにその後口コミでヒットした「この世界の片隅に」も切り口は違いますが、しっかりとマーケティングで戦略を立てて地味な規模にしてはかなりの成功に至りました。
 
どれもがマーケティングの勝利と言えます。
 
 
狙い通りいったものもあれば、途中から狙い以上に上手くいったりすることもあり、マーケッターの戦略が当たりパンデミック的にヒットした実例です。
 
君の名は。」はなんとあの「千と千尋の神隠し」に次ぐ邦画史上2位の興行成績を収めたとのことです。
 
バケモノか。
 
 
もしも省エネ基準をマーケティングしたら
では2020年に義務化される省エネ基準を、マーケッターがマーケティングするならどのようにするのでしょう。
 
自分がマーケッターになったつもりで、勝手に考えてみました、「もしエネ」です。
 
 
まずはトップランナーオピニオンリーダーインフルエンサーを定めるところからマーケティングを開始します。国にはそういった団体や学識者、著名人は事欠くことはありません。
 
誰でもどんな団体でも選びたい放題ですし、新団体も旗揚げし放題です。規制や法律もお手の物なので、民間から反発を喰らわないように粛々ミリミリと進めていくことに気を使います。
 
○○大学教授、○○省エネ研究所理事、○○政策課など、国側の布陣が済んだらせっせとアメ作りに励みます。アメとは具体的に、補助金や助成制度です。
「アメとムチ」とは良く言ったものですが、まずはアメが先でムチはずっと後です。2016年が終わった現在でもアメはたくさんありますが、ムチはまだあまり見えてきません。
 
トップ層にアメがバラ撒かれ、世間にも浸透してきた所で省エネ基準義務化を段階を踏んで告知します。
 
まずは「義務化するよ」という予告、次に「義務化の内容は平成11年基準相当だよ」といった内容、最後に「義務化は2020年からね」という締め切り(デッドライン)と、そしてオマケで「前倒しするかもしれないよ」と実に順番に順番に情報は小出しにされています。
 
さらに「エビデンス」と言われる実証研究データを採取し、国の後追して信用性の高いものとして公開します。
ここらあたりで、エンドユーザー層にも断片的ですが情報が届き始めるようになります。
 
義務化の直前では、ほぼ全てのプレイヤーが対応を迫られるまでになっています。
新しい規制という形ではなく、社会的に正しいこととして認知されています。
(ソーシャルコレクトとでも言うのでしょうか)
 
そして新築住宅の義務化の次は、当然既存住宅にも義務化の手を広げます。さも当たり前という雰囲気を創りだして。
 
 
最後の一文は、私の勝手な付け加えです。
 
こうやって順を追ってみると、じっくりと絡め取られているような気もしますが、とても受け入れやすい上手な流れであることもまた事実です。
 
ちなみに省エネ基準の原型は昭和55年の省エネ法により初めて作られ、平成4年、平成11年と徐々に順を追って厳しくなってきています。住宅の場合、義務化ではなく努力目標ですが。
 
先に基準だけを作って運用の実績を積み上げ、ある時パっと義務化するやり方は反発を抑えるには効果的だと規制される側でも感じます。なおかつ「どうせいずれ規制されるなら、早いうちから規制を受入れた方がいいじゃん」という優等生的な考えすら湧いてくるので不思議です。
 
 
 
また、エビデンスと言えば、先日、国土交通省事業の報告会があり、永田町まで出向いて聴講してきました。
 
「住宅の断熱化と居住者の健康への影響に関する全国調査・中間報告会」
国土交通省スマートウェルネス住宅等推進事業調査の実施状況~ 
 
タイトルの示す通り、住宅の断熱化は居住者の健康に良い、という結果が数値として明らかに報告されました。
これも流れに沿ったものだと感じました。
(こちらもいずれ取りまとめます)
 
 
 

島に靴を履く文化は根付くのか?

冒頭の話ですが、後者のセールスマンが大成功を治めるには、これまで靴を履く文化がなく常に裸足で生活している島人に靴を履く文化を根付かせることが、大きなカギになります。
 
断熱未改修の既存住宅に断熱改修工事をして省エネ化するには、住む人に「暖かい・涼しい家」が良いものだと気付いて貰いたいと思います。
 
住む人が快適に心地よく生活でき、健康に良い環境が、省エネルギーで実現できる、という良い面をしっかりとアピールしなければ、断熱改修の需要は発生しません。
 
以前、ブログ日記にて光熱費の先食いという切り口で断熱改修の費用を捻出する話に触れました。
 
 
正直、まだ光熱費の削減だけでは動機づけには弱いです。これは直にお客様と話していても強く感じます。
 
夏暑くて・冬寒い家の生活しか知らない場合、いくら説明しても実感がわきません。暮らしてみて体感できるものなので、なおさら効用を感じにくいのです。
(これが、私のように外断熱の家から普通の家に「住み心地の都落ちをすると、即身体が悲鳴をあげます)
 
「食えばわかる」ならぬ「住めばわかる」とは、すんなりと行かないのです。
 
 
 
省エネ基準の義務化は新たな規制ではあるのですが、公共の福祉に資する目的であるため最大多数の最大幸福の観点から見ると受入れが妥当です。むしろ規制ではなく権利と捉えて、積極的に他業界へパイを奪いに行くという考えでいるくらいのほうが望ましいと言えましょう。
 
 
 
(再掲)大切なことは正しい情報を伝え続ける努力をすること
そのためには、コツコツと正確な情報を伝え続けること、発信し続けることが地道ですが正しい道と言えると思います。
 
またそのことができるのは、高性能な高気密高断熱住宅を建ててきた経験の深い工務店です。
 
高断熱住宅は断熱性能を上げるだけではなく、気密性や結露の問題を原理から熟知していなければなりません。単純に今までの倍の断熱材を詰め込んだだけでは、かえって建物の構造寿命を縮めるだけになってしまいます。
 
そうしたことをエンドユーザー様に間違いなく、また分かりやすく、今までお伝えしてきました。
これからも積極的にお伝えする努力を重ねてまいります。
 
 
 
 
 
果たしてこのような建築側からの書き方で、読んでくださるエンドユーザーの方がいらっしゃるのだろうか?と心配になりますが、中にはそういう方もいらっしゃると信じたい・・・・・。