高気密高断熱住宅が健康に良いと感じる自身の経験 ③温熱環境編
日曜日は現場見学会を行い、幸いにしてお茶っぴきにはならなかったので、その顛末をまとめているところです。
今回の記事は書きための中から、自身の経験③です。
寒い家は健康を損ねる
アトピーや花粉症を患っていなくとも室内の温熱環境は人体に大きな影響を与えるファクターです。古くより「冷えは万病の元」といわれるように、寒い家はそれだけで身体に悪影響を与えます。軽いものでは風邪をひいたり、重篤なものではヒートショックからの脳梗塞や脳溢血も、寒さに起因するものとされています。重視されてきたのは夏
しかし吉田兼好の「家づくりは夏を旨とすべし」という一節にもあるように、古来より日本では寒さを軽視し、暑さや湿気にのみ着目してきました。(寒さが生死に係る北海道や東北の一部を除きます)また寒さ対策も、いかにして家を冷やさないようにするかではなく、いかにして効率よく温めるかという暖房重視の方向へ進化してきました。その結果、コタツやエアコンなどのメカの分野が発展してきたと言えます。熱を逃がさない冬モードの仕組み
高断熱住宅の冬モードは、室内の熱を逃がさず、太陽の熱を取り込み、自然な暖かさを閉じ込めることにあります。エアコンや涼温換気はあくまでも周囲の環境や住人の特性に応じた、微調整のための補助熱源として考えるよう発想の転換が必要です。これまでの家は居住者の活動によって生じた熱や、太陽光の自然熱、暖房熱が穴の空いたバケツの如く外へ逃げてしまっていました。その穴を塞ぎ、埋め、極力熱を逃がさないように設計施工した家、これが高気密高断熱住宅の本質です。熱を貯めこまない夏モードの仕組み
逆に高断熱住宅の夏モードは、室内の余計な熱を速やかに排出し、複層窓ガラスやヒサシなどで太陽光を極力遮断し、外から熱を取り込まないようにします。人間や家電の排熱はエアコンを上手に使って一定の快適な温湿度をキープして調整します。これまでの「夏を旨」としてきた古くからの知恵を活かし、冷房を最大限効率的に使うこと。穴あきバケツの穴を塞ぎ、外界と温熱的に遮断するように設計施工した家、これも高気密高断熱住宅の真髄です。外断熱工法と涼温換気の組み合わせ
結果、健康な家、快適な家、冷暖房費節約の家、住み心地の良い家、としての効用を得られる家、それが涼温な家です。夏涼しく、冬暖かく、梅雨爽やか、これらは建物の断熱気密性能というハードの部分と、住まい手の理解工夫によるソフトの部分が高い次元で融合して真価を発揮します。作り手と住まい手の、正しい設計、正しい施工、正しい理解、正しい住まい方、正しいお手入れ、そのどれもが欠けても成り立たないので、言い方は大変無礼な感じになりますが作り手と住まい手を選ぶ建物です。これまでのお客様はそのことを深く理解し、住むごとに住み方の工夫を重ね、高いパフォーマンスで高気密高断熱の性能を活用していらっしゃいます。「今よりもっと快適になるんですね」
私が今までで特に印象的だったお客様がいらっしゃいます。とあるメンテでお伺いした築5年を越える方でしたが、メンテついでで外断熱の要所を点検・清掃していたところ、当時の換気機械が止まっていたのを発見しました。何かの折りに止まったのか、初期不良だったのかは分からずじまいでしたが、恐る恐るお施主様にその旨を報告して再起動させたところ、こうおっしゃって頂きました。正直、大変なお叱りを受けるものだと覚悟していましたので、この返しには頭が真っ白になるくらい驚きました。そしてそう思って頂けていることに深く感動しました。そんな風に思っていただけるなら、もっともっと知識経験を得て、どんどんお住まいの方にお伝えしていかなければいけない。そんな今でも昨日のことのように思い出せる出来事でした。今でもお伺いするたびに快適に生活していることをお話しして下さいます。外断熱住宅から「涼温な家へ」
エアコンという文明の利器により、「夏を旨」とする家づくりは終わりを迎えたように思われましたが、エアコンによる手軽な冷房は「涼」ではなくまさしく「冷」だったので、冷え性や冷房嫌い、自律神経の不調という新しい問題を発生させました。オフィスではエアコンが強すぎるために、毛布を羽織ったり、足元に暖房を置いたりするなど、全くもって本末転倒なことも起きています。局地的に強すぎる冷気を送り込むエアコンは、効率こそ大変に素晴らしいものですが、直に風を受けると大変に不快な感じを受けます。エアコンが嫌いという方は数多くいれど、好きな方は非常に少数です。冷暖房の進化の頂点・涼温換気
しかし、外断熱の家では、局所冷暖房、小屋裏エアコン、熱交換気と使い方と機器を工夫し、エアコンの効果を最大限発揮しつつ快適性を確保した涼温換気に至りました。これは冷暖房の革命と呼んでも過言ではない発想の大転換だと私は思います。原理が単純明快で理解されやすいのも、多くの方に支持される理由でしょう。一見、全館空調と見紛うシステムですが、その本質が換気であることが根本より異なります。今では後発類似の機械や仕組みが溢れているようですが、誰も発想しなかった、誰も具体化しなかったアイデアを形にして検証して世に送り出したマツミハウジングの松井会長及び技術陣、そして全国で普及に務める「いい家をつくる会」メンバーにはひたすら頭が下がります。プランや土地、お客様のご希望によってなかなかご採用が難しい涼温換気ですが、住み心地を高いレベルでお求めになるお客様には自信を持ってお勧めしています。皆様がいい家に求める希望は様々ですが、涼温な家はその最高峰と位置づけて、これからも今まで以上にアピールを重ねているところです。
温かい、寒いは明確に健康に影響がありますね。
以前にある医療関係者から聞いた話なのですが、老人ホームのような施設では一番人気のある角部屋から入居者が亡くなっていくそうです。
明確に統計を取っているわけではなく、そんなことを発表したら大変なことになってしまいますが、医療者の経験則で大勢の従事者が薄々そう感じているそうです。
「原因はわかんないんだけどね~」
と、言っていましたが、原因には心当たりが超あります。
間違いなく温熱環境悪く、体に負担が気付かれないレベルで蓄積しているんでしょうね。ちょっとずつちょっとずつ料理に塩を多めに入れているようなものでしょうか。
一応、彼/彼女にこれこれこういう理屈だと思うよ、と説明したのですが一笑に付されました。
まあ建物の温熱環境に関する一般人の感覚はそんなものなんですよね。