不動産部門・宅建業を用いた既存住宅の活かし方
今後は工務店・リフォーム店も不動産業の活用ができるところとできないところの差が大きくなっていくような気がします。
宝の持ち腐れだった不動産部門
黒柳建設には影のペーパーカンパニーが30年以上も前から存在しています。別に怪しげな意味ではなく、昔は活用していたけど今となってはほとんどする事がないので、勝手に影に引き篭もってしまった引き篭もり会社です。バブル期の遺産
黒柳建設も例外ではありません、今では考えにくいことですが当時は誰もが当たり前のようにやっていた、とのことでした。バブル時代の出来事はなんでもアリですね。ところがバブルが弾けて、大きく手を広げ過ぎた会社が倒産し、これではいけないと規模を縮小して各社が専門分野に注力するようになりました。業界は得意な分野ごとに住み分けが進み、トータルで囲えるのはバブルを上手く乗り越えた会社か、大手やパワービルダーのような面の制圧力が強い会社の取る戦術になりました。黒柳建設は注文住宅とそのメンテナンスを主要領域とし、不動産部門は過去の遺産となりました。それから10年以上の月日が流れました。2016年レインズ登録・不動産部門再始動
2016年は黒柳建設にとって記念すべき年になりました。休眠状態だった不動産部門を叩き起こし、レインズに登録して、不動産の物件情報を取り扱い始めたのです。土地や建物の物件情報の提供から、仲介、建築工事、メンテナンスまでを一気通貫して手掛ける事を視野に入れました。と、言っても、最初はレインズで仕入れた土地情報を、土地からのお客様にご紹介している程度から始めるところからです。ですが、不動産情報を扱うということは、土地価格や家賃相場の一次情報を直接得られるため、情報収集にはとても役に立っています。というか、不動産をご存じの方だったらお分かりいただけると思いますが、レインズどころかマイソクすらありませんでした。これで、いかに不動産を放ったらかしにしていたか、少しはわかると思います。さて、不動産部門を再起動(リブート)したわけですが、これには大きく二つの理由があります。①面白い土地の発掘と価値の再発見
黒柳建設ではこれまで、首都圏東京という土地がべらぼうに高額なエリアに、変形土地・狭小敷地に注文住宅を建てる事は珍しいことではありませんでした。むしろ日常でした。数多くの名(迷?)建築が生まれ、メディアでも紹介されています。また土地から強い条件を受けた建物は、その土地の魅力を最大限利用したとても面白い建物となります。これを逆手に考えて、どうせなら最初からそういう難条件の土地を斡旋するのも黒柳建設っぽくて面白いのどうせならはないか、と考えました。これについては、いずれ詳しくお話しします。②既存住宅(中古住宅)の活用を睨んで
既存住宅の活用・流通活性化は、10年ほど前から徐々に広まって来て、2015年ほどから一気に周知されるようになった最新の国策です。ただ、黒柳建設の周囲では話としては聞いてはいるものの、具体的に取り組んでいる会社はまだあまり聞きません。バブル期の後遺症というかトラウマが不動産への高い参入障壁になっているのは間違いないでしょう。なんせ軒並み倒れていったそうですから、あの頃は。特に不動産に手を出して、いっときは大成功しているように見えた人・会社ほどアッサリと倒産してしまったそうです。しかし、既存住宅の活用と流通は単なる土地転がし主体のバブル期とは違います。きちんと国策に則ったこの国の未来のために必要なことです。既存住宅流通(中古住宅売買)に絡めた、リフォーム・リノベーション工事のワンストップでの受注も始まっています。身近なお客様から始めました
まずは、OBのお客様からのご相談をお受けするところから始めました。既存住宅活用、不動産のご相談、節目点検などの話題をニュースレターで告知したところ、数件ですがOB顧客様からご相談が寄せられました。具体的なお話についてはご紹介できませんが、相続や売買、自宅以外の所有物件などのご相談でした。首都圏・東京は土地建物は資産・財産であるのと同時に、のんびり保有して考えることのできない足の早い素材でもあります。その身近で気心の知れた相談先として、黒柳建設を利用していただければと考えています。ということは、宅建も取らなきゃいけないんですかね、私?
国の住宅政策を読み解く[後編]省エネ住宅の普及
省エネ、省CO2、低炭素、低燃費、などなど高性能住宅を修飾する言葉はたくさんありますが、なんとなく「省」とか「低」はマイナスのイメージの方が強いと感じます。
その点「長期優良住宅」というネーミングは素晴らしいです。
「性能向上住宅」も捨てがたいのですが、どちらも前向きで優れているイメージが湧きます。
住宅・建築業界に入った時から、高気密高断熱の外断熱工法の木造住宅を主に扱ってばかりでしたので、省エネ基準不適合な建物がここまでたくさんあるとは、知識としてはわかっていますが、実感がわきません。自分自身が現場監督したり、OB顧客様の訪問や点検をのべ何百件として来ましたが、そのほとんどが高性能住宅だったからです。前回に続いて、近年の住宅政策をあれこれインプットして、私が感じていることを取りまとめたアウトプットです。相変わらず後ろも横も見ないで突っ走っている文章であることを、最初にお詫び致します。あとすみません、若干商売っ気が強い文章だと感じられるかもしれません。未開の島で靴を売れるか
営業の分野では有名な話ですが、未開の島に辿り着き裸足の原住民を見た二人の靴のセールスマンの話です。二人共「なんてこった!この島の人たちは靴をはく習慣がないじゃないか!!」と驚きます。片方は「誰も靴を必要としていない、これでは靴が1足も売れない!」と嘆き、もう1人は「これでは全員に1足ずつ靴を売ることができる、売り放題じゃないか!!」と大喜びしたという話です。(ポジティブ思考の人は超強ぇー)需要が無いのなら作り出せばいい、そうすれば先行者利益で独占できる、という夢の様な話ですが、そんなに簡単な話ではありません。ですが、そのように考えた人だけがそこに辿り着けることもまた事実です。さて、そんな裸足の島民と同じように、需要は(ほとんど)無いが可能性は膨大な市場が私たちの前に存在します。断熱未改修の既存住宅のことです。5000万戸の既存住宅の95%が不適合
現在国内にある5000万戸の住宅ストックのうち、平成11年基準の断熱性能を持つものはわずか5%(約250万戸)、また平成四年基準、昭和55年基準のどちらも満たさないいわゆる無断熱の建物は約4割に上ります。最新の平成28年基準は平成11年基準と実質ほとんど変わらないので、2020年に省エネ基準が義務化されると、既存住宅の95%(4500万戸)以上が断熱性能・省エネ性能で既存不適格になります。また最新の平成28年基準を遥かに超え、気密性能も高い黒柳建設の家づくりから比べると平成11年基準未満の断熱性能は「(断熱材が)入ってないよりマシ」程度の住み心地であり、下手に結露して構造材が腐ったりシロアリに食われる危険性を考慮すると、「(断熱材が)入ってない方がマシ」だったりします。前回の話題である住宅ストックを活用すれば、建設に掛かるコストは圧縮できますがエネルギー使用というランニングコストは悪いままです。燃料費というエネルギーコストの原価が上がる一方なので、資料エネルギー量を減らさなくてはなりません。そうすると国としては4500万戸の断熱不適合な既存住宅について対策を施さなくてはなりません。そこに「未開の島に靴をはく習慣を広めるセールスマン」の話が当てはまります。まさに、全国4500万戸の省エネ基準不適合な住宅は、断熱改修工事を待つ大切なお客様、と見ることもできます。あとは断熱性能の向上がどのようなものであるかをわかりやすく知っていただくこと、が重要な課題となってきます。すでにオピニオンリーダー的な方々が各地に誕生しつつあり、先駆者として様々な実践を重ねておられます。そうだ、持って行くんだ・・・・・彼みたいに・・・!(・・・・・ザワザワ・・・・・ざわざわ)エネルギー消費(浪費)型住宅からの脱却
2011年に発災した東日本大震災は様々な意味で日本という国を根底から変えてしまいました。表向きは平穏な日常を取り戻したかに見えていますが、住宅業界は家のエネルギー消費に対する答えを求められるようになりました。黒柳建設は「いい家をつくる会」の理念を共有し、住み心地を第一に考えていくと基本的な断熱性能の確保に立ち戻ることを再確認し、省エネに務めた住み心地がしっかりと良い家づくりをその答えとしています。しかし近年ではZEH基準の中に断熱性能の強化が必須とされたため、ZEHに対応した建物の基本性能も向上しています。そしてさらに、そういった高性能高価格な建物がしっかりと売れているということで、新築の住宅は確実に高性能化してきていると言えます。ですが、年間着工棟数が仮に100万棟だったとしても、既存住宅5000万棟を全て建て替えるには50年かかる計算で、とても現実的ではありません。新築住宅は基準を義務化して一段落?
自分のブログ日記でも何度も出て来ますが、2020年に新築住宅も省エネ基準が義務化となり、非住宅やビルは既にその対象となっています。とりあえずはこれで日本にも省エネ義務レベルが設定され、徐々に周知され定着していくこととなるでしょう。その後恐らくですが、住宅全てを対象とする施策はそこで一旦トーンダウンすることになると思います。これまで通りトップランナーに牽引させる方針は継続すると思いますが、省エネ基準を段階的に引き上げていくことは当面の間ないと考えています。なぜなら、国の本命は国内住宅ストックの95%を占める不適合な建物にあると見ているからです。年々着工棟数が減少する新築住宅はそれなりの性能を満たすようになり、その目処もついています。それが一段落したところで、野放しになっている既存住宅に徐々に着手する方が全体の省エネルギー化には効果的だからです。マーケティング的に思考を適用する
流行を作り出す一連の流れは、マーケティングで行うのが最近の流行りです。(この思考がすでにマーケッターにやられていることも否めない)どれもがマーケティングの勝利と言えます。狙い通りいったものもあれば、途中から狙い以上に上手くいったりすることもあり、マーケッターの戦略が当たりパンデミック的にヒットした実例です。バケモノか。もしも省エネ基準をマーケティングしたら
では2020年に義務化される省エネ基準を、マーケッターがマーケティングするならどのようにするのでしょう。自分がマーケッターになったつもりで、勝手に考えてみました、「もしエネ」です。最後の一文は、私の勝手な付け加えです。こうやって順を追ってみると、じっくりと絡め取られているような気もしますが、とても受け入れやすい上手な流れであることもまた事実です。ちなみに省エネ基準の原型は昭和55年の省エネ法により初めて作られ、平成4年、平成11年と徐々に順を追って厳しくなってきています。住宅の場合、義務化ではなく努力目標ですが。先に基準だけを作って運用の実績を積み上げ、ある時パっと義務化するやり方は反発を抑えるには効果的だと規制される側でも感じます。なおかつ「どうせいずれ規制されるなら、早いうちから規制を受入れた方がいいじゃん」という優等生的な考えすら湧いてくるので不思議です。「住宅の断熱化と居住者の健康への影響に関する全国調査・中間報告会」~国土交通省スマートウェルネス住宅等推進事業調査の実施状況~タイトルの示す通り、住宅の断熱化は居住者の健康に良い、という結果が数値として明らかに報告されました。これも流れに沿ったものだと感じました。(こちらもいずれ取りまとめます)島に靴を履く文化は根付くのか?
冒頭の話ですが、後者のセールスマンが大成功を治めるには、これまで靴を履く文化がなく常に裸足で生活している島人に靴を履く文化を根付かせることが、大きなカギになります。断熱未改修の既存住宅に断熱改修工事をして省エネ化するには、住む人に「暖かい・涼しい家」が良いものだと気付いて貰いたいと思います。住む人が快適に心地よく生活でき、健康に良い環境が、省エネルギーで実現できる、という良い面をしっかりとアピールしなければ、断熱改修の需要は発生しません。以前、ブログ日記にて光熱費の先食いという切り口で断熱改修の費用を捻出する話に触れました。正直、まだ光熱費の削減だけでは動機づけには弱いです。これは直にお客様と話していても強く感じます。夏暑くて・冬寒い家の生活しか知らない場合、いくら説明しても実感がわきません。暮らしてみて体感できるものなので、なおさら効用を感じにくいのです。(これが、私のように外断熱の家から普通の家に「住み心地の都落ち」をすると、即身体が悲鳴をあげます)「食えばわかる」ならぬ「住めばわかる」とは、すんなりと行かないのです。省エネ基準の義務化は新たな規制ではあるのですが、公共の福祉に資する目的であるため最大多数の最大幸福の観点から見ると受入れが妥当です。むしろ規制ではなく権利と捉えて、積極的に他業界へパイを奪いに行くという考えでいるくらいのほうが望ましいと言えましょう。(再掲)大切なことは正しい情報を伝え続ける努力をすること
そのためには、コツコツと正確な情報を伝え続けること、発信し続けることが地道ですが正しい道と言えると思います。またそのことができるのは、高性能な高気密高断熱住宅を建ててきた経験の深い工務店です。高断熱住宅は断熱性能を上げるだけではなく、気密性や結露の問題を原理から熟知していなければなりません。単純に今までの倍の断熱材を詰め込んだだけでは、かえって建物の構造寿命を縮めるだけになってしまいます。そうしたことをエンドユーザー様に間違いなく、また分かりやすく、今までお伝えしてきました。これからも積極的にお伝えする努力を重ねてまいります。果たしてこのような建築側からの書き方で、読んでくださるエンドユーザーの方がいらっしゃるのだろうか?と心配になりますが、中にはそういう方もいらっしゃると信じたい・・・・・。
国の住宅政策を読み解く[中編]ストック循環社会
本業のほうで「ストック住宅」構想というものを掲げていまして、今回触れている「住宅ストック循環支援事業」は名前が被ってしまっています。
どっちが先というものではないのですが、名称をパクっているわけではないので紛らわしいですがご了承下さい。
アレコレと工務店の進む道を考えるために、これまでと今を考えてみました。一度頭の中を整理するためにもアウトプットしてみます。前回は建設業界でも、特に土木分野の公共事業についてでした。建築と土木は非常に似通っていながら(所管省庁は国土交通省)、中の人の気質はかなり異なります。よく、建築は個人主義で芸術家肌、土木は体育会系でチーム主義なんて、ざっくり分けられたりしたものです。ちなみに在学時の男女比は、建築が女性3割に対して、土木は女性1割を切っていました。な、なぜだ!?最近は「リケジョ」ならぬ「ドボジョ」も増えてきているそうですね。日本の抱える問題と課題の中の住宅産業
日本は世界的にもかなりの先進国かつ円熟した国へと成長し、新たな課題を数多く抱えています。これらの問題と課題はことごとく密接に絡み合っていて、対処するには社会が完成され過ぎており、素人目にはどれから手を付けていいのか分からないくらいに複雑です。それでも根本を集約すると大きく3つに分けられます。急募!一発逆転の解決策
この3つだけでも相反し合っているので、解決を放棄したくなるほど無理ゲーです。人口を増やすためには手当を充実させ、若者を子育てに誘導しなければなりませんが、若手世代は生産活動の担い手ですから、経済への悪影響が懸念されます。生活水準を支えるにも生産世代の労力が必要ですし、移民を受け入れれば良いというものでもありません。社会全体の仕組みを変えていかなければとか、昔は良かったとか、最近の若者は、団塊の世代が、とか言っても何も解決をしませんし、手を打たなければゆるゆると衰退し始め、ある時一気に凋落へ向かいます。これを回避し豊かな生活を維持向上させるために、国は様々な手を打っているのですが、前述の通り複雑すぎてわかりにくいのが難点です。そこをしっかりと考えることで、次の一手を探ることができると考えました。2015年、2016年と戸建ての注文住宅数は、周辺の仲間たちも激減しています。このまま手をこまねいているとジリジリと衰退していってしまう危機感があります。実は、土木建設系の公共事業がやりにくくなった国は、住宅政策を改めて見直しています。地域の工務店、建築会社、大工さん、職人さんに上手に仕事が回るように民間を活気づければ、大型工事を上回る経済の循環を作り出すことができるのです。では、そのからくりはどういったことでしょう。(こんな事書いちゃっていいのかな~?)住宅業界の場合
さて公共事業は建設業界とは言っても、ビルや道路といったいわゆる箱物の話でした。建設業界でも一戸建て住宅を対象とした住宅業界にはまた別の施策が取られてきました。高度経済成長期に「夢のマイホーム」「一国一城の主」と謳われ、一般市民もマイホームを購入することが当たり前になってきます、ここまで前回話しました。庶民のマイホームで消費拡大
「郊外に住宅地を新たに作り、その居住者を鉄道で市内へ運ぶ」という小林一三のアイデアは私鉄経営の基礎となり、大阪・名古屋・東京と大都市には私鉄が路線を宅地開発して販売し、ハウスメーカーや黒柳建設のような中小工務店がたくさん創業し住宅の建設に当たりました。そうなると仕事が増えて雇用が生まれ消費が拡大し、経済が循環します。また土地建物を一般市民が当たり前に所有することになると、そのものに価値が生まれ値段が付き、取引が活発化されます。そこで固定資産税、不動産取得税といった税収が増え、国も住宅取得を積極的に誘導し、今日に至ります。人口減少時代で拡大路線は転換
さてそんな建設バブル、人口ボーナスの恩恵はとっくに終わり、人口減少時代に突入しました。これまでに拡張された広い住宅地は徐々に不要になり、郊外への拡張から中央への集約へと路線転換しつつあります。田園都市からコンパクトシティです。インフラは新設と維持管理がセットで考えられるようになり、国土開発から国土保全へと切り替わりつつあります。住宅も全国で約5000万戸の既存住宅があり、新築着工棟数は年々減少傾向にあります。フロー型社会からストック循環社会へ、スクラップアンドビルドの壊して建てるから良いものを長く使う路線へ、既存の物を活用する方向へとシフトし始めています。住宅業界では既存住宅の流通活性化を1つの目標に掲げ、築20年で評価価値がゼロになる現在の評価基準を改め、実質価値で査定される新しい評価基準を定めています。既存住宅流通とは、「中古住宅売買」の言い換えです。住宅の一次取得層を中心に、モノがしっかりしていれば中古住宅でもオーケーという層が増えてきたため、既存の資産を再流通させて活用する手法です。これは今までのフロー型社会から、ストック循環社会への転換です。正直言うと、黒柳建設のような新築重視の工務店はちょっと困るのですが、すでに時代は動き始めています。それに、途中で事業の方向性を変えてはいけないなどと誰かが決めたのでしょうか?そんなことはないですね。補助金投入のケーススタディ
何度も事例に出てきて恐縮ですが、手本となるモデルはドイツにありました。ドイツは建設関係の消費のうち、実に75%が既存改修で発生しており、新築・新設は25% です。このモデルはかなり信頼性の高い数値が計測されており、日本の国土交通省もノウハウを学んだ、ということを聞いたことがあります。住宅ローンを価値ある投資へ
夢のマイホームづくりの実務面をずっとして来た私たちが言うことではないかもしれませんが、マイホームの購入は不動産投資的な目線で見ると全くもって理にかなっていないと言えます。不動産投資と言う意味に限ってです。きちんと手入れをして、雨漏れと腐朽をしっかりと防いだ建物は30年くらい余裕です。実際に築50年の建物の床下に何度も潜りましたが、拍子抜けしたくらい異常がありませんでした。ですが、世の中の相場では築20年で価値はゼロなのです、これはおかしい事だと思います。これまではそのマイナス分を土地価格が高騰することで補ってきましたが、バブル崩壊で土地価格が下がることを経験しましたので、そのロジックは通用しません。そこで国は既存住宅の新しい評価基準を作り、実際の価値に応じた評価額で建物が市場に流通するように促しています。日本は欧米に比べて、住宅に対する投資額が積み上がらず時間とともに消えていってしまう現象が発生しています。リフォームやリノベーションで再投資しても、土地価格しか評価されないのであれば、古家付土地の購入者は建物を壊して新しく建てるからです。人口ボーナス期の終焉
経済が右肩上がりの時勢であれば、時間とともに消えていく額より社会で循環して生まれる額の方が大きかったのですが、人口ボーナスが終了した今では逆転しています。そこで、フロー型社会からストック循環社会への転換が必要となっているのです。国はもう随分前から現状を予見し、様々な取り組みをスタートさせてきました。既存住宅流通の活性化のため、様々な仕組みを作り、いくつもの事業を立ち上げ、ようやく本腰を入れているように感じます。例えば、昨年の11月にスタートした住宅ストック循環支援事業などはその原型を住宅エコポイント制度や既存住宅流通活性化事業などにみることができます。変わりゆく工務店の役割
そしてなにより、新築を建てるとしたら高耐久な長持ちする建物で、建物自体が資産となる住宅としなければなりません。認定長期優良住宅、認定低炭素住宅、認定性能向上住宅などの認定は普通に取り、構造・断熱・省エネにも優れた新築住宅を建築できる工務店、高気密高断熱の外断熱住宅の新築で培った技術と知見を活かした、性能向上リフォームなどができる工務店が今後は必要とされていくと予想しています。これは住宅の構造を熟知し、性能を重視した新築を建ててきた工務店にアドバンテージのある分野です。そのような目論見もあり、小金井地域のリフォーム・リノベーション・ワンストップサービス「住まいのクロケン」を立ち上げたのです。こちらの事業では宅建業を組み合わせ、土地と建物を一括で扱えるフレームが適していると考えています。幸い宅建業は30年以上の歴史があります。仮にその期間の大半が開店休業状態だったとしても、歴史は減ったりしません、実績も増えていませんけど。さて、次なる手は、そのことをいかにして上手に伝えていくかにかかっています。中古住宅売買にリフォーム・リノベで参入するも良し、物が良ければ買い取り再販もありです。相続に絡んだ建物と土地の処分も地域では発生しているはずです。現在お住まいの住宅の性能を向上させ、長持ちさせることが住まい手にとってどのようなメリットがあるのか、を正しく伝えていかなければなりません。難しい道のりですが、やり甲斐のある仕事です。実際に、昨年のニュースレターで不動産に関するご相談についてアナウンスしたところ、昨年末からすでに数件のご相談が寄せられています。やはり、ニーズはそこにあり、私たちがすくい上げられていなかったようです。嬉しいやら悲しいやら
このエントリーは随分と前に考えてまとめていたもので、日記に載せるつもりは無かったのですが、今日5時間かけて拝聴したセミナーの内容がとても刺激的だったので、大変影響を受けて昔の覚え書きを若干アレンジして日記に載せてみました。と言うか、やりたいと漠然と考えていた事は全部今日のセミナーでわかりやすくまとめられていました。先進的な事例もたくさん見させてもらいました。チクショウ、なんてこった。次回、もう少し続きます。長文過ぎたので、適度に編集し直して再投稿します。今日はとにかくアウトプットしたかったので。(追記)土木建設分野の公共事業についての部分を切り離し、前説として再編集しました。これに伴い、[前・後編]から[前・中・後編]の3回ものになりました。
国の住宅政策を読み解く[前編]公共事業と土木建設
偉そうに大上段から語っていますが、ご笑覧下されば幸いです。
古き良き伝統・景気対策には公共事業は正しいのか?
世界は公共事業=軍事産業
世界を見ても景気対策において多くの国が行う定番中の定番が、軍事費の増大です。特にアメリカ、オメーはちっと自重しろ。軍需産業、軍産複合体が肥大化したアメリカでは、東西冷戦時に莫大な費用を軍需産業に投下し続け双子の赤字と言われる貿易赤字と財政赤字を生み出しました。クリントン時代にある程度解消されたのですが、ブッシュ時代にイラク戦争などで再発し優等生オバマ前大統領がヒーヒー言って火消しに躍起になっていました。さて、トランプ大統領はどうするのでしょうか。すでに世界にケンカを売っているような気がしますが。日本では防衛費GDP1%の制限やアメリカの庇護もあり、防衛産業をあまり育てることができず、その代わりに土木業を中心とした建設業界に景気対策を見出しました。錬金術のような建設費の捻出
例えば、池袋駅からほど近い豊島区役所では、2015年の5月に総工費430億円かけて新庁舎がオープンしましたが、税金投入は実質ゼロ円で新庁舎を建設したと話題になりました。同様の手法で渋谷区役所も新庁舎を建設中であり、こちらは2019年にオープンする予定です。一体どんな魔法を使ったのでしょうか?渋谷区の場合
旧区役所と旧渋谷公会堂の敷地の一部に定期借地権を設定し、民間事業者から対価を得ることでその建設費負担をゼロとしています。事業者には三井不動産が選定され、分譲マンションを建設・分譲します。すでに旧庁舎は解体が完了、2016年の9月より新築工事が開始しています。豊島区の場合
新庁舎の上層階を権利交換で地権者の住宅とし空き部屋を販売することと、旧庁舎の跡地を定期借地で民間にも貸与することで、数百億円もの建設費を創出しました。両区とも財政に余裕があるわけではなく、区単独では建設費を捻出できず新庁舎の建設は棚上げされ続けてきましたが、老朽化と震災の損傷で建て替えは必須でした。こうした民間の資力を活用することにより、税金を使わずに新庁舎を建設することができたことで、公共事業の新しい形が示されています。行政、民間企業、利用者の三者に利益のある素晴らしい施策だと思いました。最大多数の最大幸福で、公共の福祉に寄与し、様々な価値を増進することができるコロンブスの卵です。公共事業と言えども、やればできるんですね。半公共事業としての住宅取得
公共事業は国や地方自治体がイニアシティブを握りましたが、住宅行政はどちらかと言うと民間や市場任せです。ですが、旧住宅金融公庫のように、エンドユーザーが住宅取得のための資金を得やすい状況を整備したり、各種の規制を緩和して住宅用地を拡張したりして、ある程度意図的にマイホーム化を促してきたと読めます。ちなみに、戦前の日本人の借家率は8割を超えていたという記録が残っています。かなりの人が一生借家住まいだったのを、住宅ローンを利用することで持ち家族になれるということで、「夢のマイホーム」が現実のものとなりました。「いつかは我が家を手に入れる」という考え方が、割りと普通の感覚になってきました。意図的なのか、偶然なのかは、当時の文献をあたるか当事者たちに聞いてみないとわかりません。次回は「夢のマイホーム」に目を向けてみます。※次回の[中編]から分離して、[前編]として再編集しました。
勉強会の「外化」で得られた気づきと学び
お気づきの方も多いかと思いますが、下記の引用先の日記は本業の会社のサイトでブログ日記として公開しているものを、こちらにも転載しています。
そろそろ、こちらはこちらで別の記事を書いた方が良いのではないかと思っていますが、今日も懲りずに転載します。
ペナルティ喰らうかなぁ?
事例発表を通して学べたこと気づいたこと
さて、一晩寝たのでスッキリ何事も無かったように、一連のチラシ作戦の事例発表を通じて得られたこと、学べたことについてです。「外化」の大切さ
ちなみに「外化」とは、こちらの勉強会で推奨している、一連のアウトプット体系のことだと解釈し理解しました。誰かに伝えるためには、分かりやすくまとめて整理しなければなりません。その作業の過程で、今回のチラシ作戦の中身について復習ができるため、次へ繋げるために自らの行いから学ぶことができる、とても効果的な学び方です。また、発表をすることでその内容をシェアし、評価をいただき、さらにブラッシュアップさせることができます。一石三鳥の妙手だと、頭では復習が大切なことはわかるのですが、もう一旦終わってしまったことなので、なかなか切っ掛けがないと着手しません。今回の勉強会で発表すると決めたのも、外化をするために自分をちょっと追い込まなければと思ったからです。自分自身を信じること
別に外化なんぞせんでも、自発的に検証・改善ができるのであれば、発表なんてしなくても良いわけです。他者からの評価は貰えませんが、自家発電でPDCAサイクルが回せるのであれば、他者評価も不要です。ですが、自分はそんなデキル人間なわけがないので、気が進まなくても無理矢理「やる!」と言ってしまって、自分を追い込んだ方が確実なのです。ヤなことは 明日に回そう ホトトギス
永遠に問題の先送りです。これではラチがあかないので、前回の勉強会の後、朝日ウッドテックの担当者さんと話す機会があったときに「発表する」と宣言しました。した気がします。また知らない間に芸人スイッチが押されてしまいました。多分担当さんは覚えてないか、仮に発表できなくても「仕方ないですね、お忙しいですから」と言って下さるでしょうが、それでは何も進歩しません。せっかくチラシ作戦を行なったのに、このままでは検証も何も無しに流れてしまいます。それでは流石に勿体無いです。やるのなら キッチリやろう ホトトギス
こうして退路がめでたく絶たれたところで、事例発表は願望ではなく、具体的な達成目標になりました。こうなるとどう落とし込むかが鍵になるので、後は型にはめて行くだけです。「発表」ですから、要はプレゼンです。「起承転結」を分かりやすく意識して、パワーポイントでプレゼンシートを作れば、それでオッケーなはずです。まともなプレゼンなど大学の卒論発表の時以来ですが、留年が決まるような崖っぷちでもありません。普段行なっている外断熱の賃貸併用住宅セミナーと同じ感覚でいけるはずです。と、いう割りと甘い目論見で着手しました。実際、プレゼンシートの作成時間は、半日もかかりませんでした。原案を書き出して、パワーポイントで清書するだけですから、そんなもんです。構成も箇条書き主体で、チラシの画像をポチポチ貼り付けただけの、素材の味を生かしたシンプルなものに仕上げました。(手抜き?)最後にテイクアウト用にドギーバッグに詰めてご用意しておきますので、ご笑覧ください。事例発表を通じて願ったこと・得られたこと
こういった学びを実践していくなかで、1番ネックになるのがモチベーションの維持・増進です。黒柳建設は小さな会社ですし、自分は社長の息子(影の役職名・要は何でも屋)なので、反対する人も抵抗勢力も存在しません。それは自分一人で全てをやらなければいけないことを意味します。学び、真似び、決めて、実践して、検証して、また学び、というサイクルを一人で回し続けるのは、モチベーションが容易に低下します。そこで、勉強会で発表させてもらうことで、他の誰かと分かち合い、共感し、評価してもらい、アドバイスを頂けたらとささやかな願いがありました。結果、思いがけないほどたくさんのお声掛けを頂いたり、まさかの賞まで戴きました。何かを願って行動を起こすと、期待していた以上のことが返ってくることもあるんだなぁと、今までにない喜びを感じることができたことは本当に得難い経験でした。継続は力、継続こそ力
と、ここで終わればポリアンナの良かった探しの旅も大団円の最終回なのですが、当たり前ですがこれは始まりに過ぎませんでした。一番大切なことは、こういった取り組みを継続していくことです。人・モノ・手間・予算・気持ち、いわゆる経営資源をより良い取り組みに再投資し続けることが、実践事例発表に隠された本来の狙いだと思います。これも事例発表を行い、その一連の流れを日記として編集すること(つまり外化)で気付けたことです。何かを行い、誰かに向けて公開し、経験を分かち合い、またそれを振り返って公開する。大変ですけど、とても意義のあることだと実感を持って理解しました。遠く、果ては見えません。多分、行けども行けども先は続いているのでしょう。それでも、明日はより良い明日だと信じられる道を確かに歩き始めた、そんな感じが致します。物語に終わりはあっても、実践の道に終わりはありませんので、まだまだ次回も続きます。